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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「停戦成立で信頼関係構築!両団体の蜜月」

 1982年2月7日、ホテルニューオータニにおけるジャイアント馬場とアントニオ猪木&新間寿(新日本プロレス取締役営業本部長)の会談によって、全日本プロレスと新日本の停戦が極秘裏で成立した後、両団体の関係は良好だった。

 同年4月21日には馬場─新間会談が行われて、新間が79年8月26日の日本武道館以来の「第2回オールスター戦」開催を馬場に提案して馬場が合意した。

 第1回大会では馬場&猪木のBIコンビが7年8カ月ぶりに復活したが、試合後に猪木がアドリブで馬場に対戦を迫ったため「やはり猪木は信用できない」と馬場が態度を硬化させ、第2回大会開催は立ち消えになっていた。

 改めて新間が持ちかけたのは、当時の新日本は猪木のブラジル事業「アントン・ハイセル」の資金繰りの問題があり、大きな収益が見込めるイベントが必要だったからだ。何としても馬場に首を縦に振ってもらうために新間が馬場に提案したのは、馬場─猪木戦はやらないことを前提にしたタッグマッチ主体の大会。当時の猪木は糖尿病に苦しんでいて、とても馬場と一騎打ちをやる体調ではなかったというのも話がスムーズに進んだ要因だ。

 馬場のOKが出てからの新間の動きは、まさに“過激な仕掛け人”。新間は両団体の停戦が成立していることを知らない「第1回オールスター戦」の主催者・東京スポーツ新聞社に「仲介してくれるなら全日本と和解して第2回オールスター戦実現に協力したい」と話を持ち込んだのである。

 5月18日、銀座東急ホテルで馬場、新間と東スポの高橋典義取締役編集総長の極秘会談が行われ、東スポのオールスター戦提案に新間は無条件で賛成、馬場は引き抜き防止協定成立を条件に合意。両団体は支度準備金として300万円の小切手を受け取っている。

 東スポは1カ月後の6月17日発行の紙面で「夢の8.26再び実現へ!」と、1面でぶち上げた。

 ところが翌18日の蔵前国技館大会の試合前に記者会見を行った新間は、全日本との戦争続行を宣言。同月23日にアメリカから帰国した馬場が「今の新日本の態度では一緒にやれない」と発言するなど、にわかに不穏な空気が流れ始めた。

 これは馬場と猪木の作戦だった。表向きには両団体の戦争は継続中と見られていたため、これを利用してオールスター戦に向けて対抗ムードを煽ったのだ。

「あれは馬場、猪木のアイデアなの。あの2人こそ一番の策士よ。対抗戦以外にファン、マスコミの関心を呼ぶことはないからね。両巨頭は根底で信頼関係を築き、なおかつ“戦闘モードで行くべきだ”ということで、表向きには喧嘩を続けていたんだよ」(新間)

 それにもかかわらず「第2回オールスター戦」が実現しなかったのは、東スポの幹部から全日本の社員に機密事項が漏れたからだとされている。

「怒った馬場さんから電話がかかってきて“新間君、金はどうした?”“いや、猪木のためにすぐに使っちゃいましたよ”“実はウチの社員がこんなことを言われて帰ってきた。別にこっちが要求した金でもないのに冗談じゃない。オールスター戦はやめるよ”“御大がそう言うなら仕方ないですね。やめましょう”ということで7月3日に猪木と一緒に馬場さんと会って東スポに断ろうと。私が支度準備金を返しに行きました。馬場さんは小切手をそのままにしていたからいいけれども、ウチは金を作って返しました(苦笑)」(新間)

 東スポは7月9日発行の紙面で「オールスター戦を断念」と報じたが、新日本と全日本の蜜月は続いた。

 馬場のトップ会談の相手は猪木から新日本副社長の坂口征二に代わったが、それは「猪木は俺の前で頭を下げなきゃいけないだろう。気を遣わせるから、それだったら、これからは後輩の坂口をよこしたほうがいいんじゃないか」という馬場の気配りだったそうだ。

 翌83年1月1日、新日本の後楽園ホール大会のリング上で新間が「今年は日本人同士の戦いがファンを沸かせるでしょう。明日1月2日には坂口征二と2人で全日本の会場に馬場さんを訪ねます」と宣言。言葉通りに翌2日の午後12時過ぎに新間と坂口が全日本の後楽園ホール大会に出向いて馬場、松根光雄社長、米沢良蔵取締役渉外部長と会談の場を持った。

 これは「83年は何かが起こる」という両団体の絵作りだ。1月4日の東京プリンスホテルにおける「82年度プロレス大賞授賞式」では、馬場と猪木がMVPのタイガーマスクと一緒に写真に収まり、対戦が期待されるジャンボ鶴田と藤波辰巳(現・辰爾)が談笑するなど、実にいいムード。

 馬場に「タイガーマスクはすごいなあ。彼は団体を超越した日本プロレス界の宝だよ。大事にしないといけないよ」と言われた新間は、この年の8月18日にLAのガラスの教会で予定されていたタイガーマスクの極秘結婚式に馬場夫妻を招待した。だが、その直前に‥‥。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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