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「それ、1曲2万で歌いに行ってもいいぞ」
先日、殿の楽屋に兄弟子のグレート義太夫さんが、「殿、今年のクリスマスに、殿の歌をみんなで歌う音楽のライブをやるんですが、殿の歌を歌っていいですか?」と、まず断られることのない確認をしに来ると、殿は二つ返事で、「おう、好きにやってくれよ」と、予想どおりのOKを出した後、冒頭の発言を返したのです。
この時、横にいたわたくしはすぐさま、「2万! 安い! 殿、2万2000円出しますので、わたくしの独演会で歌ってください!」と、つい兄さんの義太夫さんを飛び越えて、自分のライブに誘ってしまいました。
で、殿は弟子から“いついつ、どこどこで、こういったライブをやります”的な報告を受けると、芸人の血が騒ぐのか、いつだって「おい、それ何曜日だ?」とか「おい、何時までやってんだ?」等々、“もし空いてたら、顔出してやるよ”的発言を放り込み、弟子たちをワクワクさせます。
もちろん、恐ろしく多忙な殿ですから、なかなか出演までには至りませんが、過去、シークレット的に弟子のライブに飛び入りしたことは何度かあり、中でも一番すごかったのが、こちらの連載でも何度か書いている、キャパ50人程の小さな劇場で開催した、わたくしの漫才コンビ時代の独演会で、何の前触れもなくビートきよしさんを連れてやってきた殿が、ツービートとして、前説という形で漫才を披露した夜です。いきなり登場したツービートに観客が驚き、悲鳴にも似た歓声を上げ、劇場が揺れた光景が今でもはっきりと脳裏に焼きついています。
ちなみにこの日のツービートは、この日のためだけに作った新ネタを7分程披露してくれました。
他にも、義太夫さんが開催した落語会にて、突然登場しては落語を披露し、会場をドッと沸かせた夜もありました。とにかく殿は、“舞台に立つ”“生の客前に出る”ことに常に意欲的で、芸人たるもの、どんなにテレビに出ようと、“いくつになっても、舞台の上で勝負しなければダメだ”といった考えをはっきりと持っています。
ですから、弟子のライブに出るだけでは飽き足らず、3年程前から、ご自身の「たけし単独ライブ」を立ち上げ、忙しい間を縫って、客前に立っているのです。そんな殿に、毎年やっている、わたくしの独演会の報告をする時、決まってかますボケが「殿、前説の枠が空いてますが、ギャラ2000円のとっぱらいでいかがですか?」です。すると殿は、
「うん。行きたいのは山々だけど、司法試験の勉強があるから、今回は遠慮しとくわ」
とか、
「それ、3000円にならない? だったら行ってもいいけどな」
とか、しっかりとノッて返してくれます。で、今年も12月2日、浅草東洋館にて「アル北郷・独演会その5」を開催いたします。また、殿を前説に誘ってみようかと思います。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!
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