スポーツ

伝説の「平成・春のセンバツ対決」90年北陽VS新田は延長17回の末に…!

 1990年に開催された第62回春の選抜高校野球は全31試合中15試合が1点差、延長戦が6試合、サヨナラゲームが5試合と、連日のように熱戦が展開された大会となった。

 中でも頂点と呼べる試合が、準決勝第2試合の北陽(現・関大北陽=大阪)対新田(愛媛)の一戦である。

この試合に先立って行われた準決勝第1試合の近大付(大阪)対東海大甲府(山梨)戦は、延長13回までもつれる大熱戦だったため(結果は5‐4で近大付がサヨナラ勝ち)、スタンドには、まだ余韻が残っていた。その熱気冷めやらぬ中、試合開始。見どころは北陽が擁する大会屈指の好投手・寺前正雄(元・近鉄)の右腕対準々決勝までの3試合で5本塁打を放っていた新田の強力打線だった。とはいえ、この時の北陽は関西のみならず全国的にも屈指の名門校。対する新田はこの大会が春夏通じて初めての甲子園で、多くの高校野球ファンが、明日の近大付との“大阪対決”を思い描くのは無理もなかった。

 試合は2回裏に早くも動いた。大方の予想を裏切って新田が先制。ヒット2本と四球で得た1死満塁のチャンスで北陽の三塁手・宮迫繁之が手痛いエラー。新田が1点を先取したことで俄然試合がおもしろくなったのであった。

 この後、寺前は立ち直り新田打線をほぼ完璧に封じていく。すると6回表に北陽が反撃。2つの死球に2本の長短打を集めて一挙に3点。逆転に成功したのだ。このまま北陽が押し切るかに思われたのだが、8回裏のことだった。3回以降、新田打線は寺前に単打2本に抑えられていたが、この回先頭の1番・池田幸徳が新田打線にとってこの試合初の長打で出塁。その後、2死三塁となるもここで4番の宮下典明(元・近鉄)がこの大会2本目となるレフトスタンドへの起死回生の同点2ランを放ったのである。こうなると追いついたほうが精神的に優位に立つ。続く9回裏に新田は1死三塁という絶好のサヨナラの場面を作ることに成功。しかし寺前はさすが大会屈指の好投手だった。新田ベンチの作戦を見破り、スクイズを外しこの絶体絶命のピンチを脱したのである。

 延長戦に入ると、悪天候もあり試合途中から照明が点灯。春の選抜の準決勝としては非常に珍しいナイターとなった。そのカクテル光線の下、北陽は依然として寺前が、新田は8回から登板の3番手・山本雅章が渾身の投球を見せ、緊迫した投手戦が続いたのである。

 当時は今のようにタイブレークもなければ、延長15回同点引き分け制でもなかった時代。気づけば16回が終了。そしてこの熱戦を見守っていた誰もが延長18回引き分け再試合になると覚悟した延長17回裏。この回先頭の新田の1番・池田が寺前の投じた238球目をレフトスタンドへ叩き込んだのである。池田にとってはこの大会2号となる劇的なサヨナラソロによって、3時間34分の激闘に終止符が打たれたのだった。

 この熱戦の疲れが残っていたのか、翌日に行われた決勝戦で新田は近大付の前に2‐5で敗退、惜しくも準優勝に終わった。とはいえ、この大会で新田はある快挙をも成し遂げていた。2回戦の日大藤沢(神奈川)戦でも9回裏に5‐4という劇的なサヨナラ勝ちを収めているのだが、その幕切れが4番・宮下による逆転サヨナラ3ランだったのだ。春夏の甲子園大会を通じて1つの大会で同一チームが2度、サヨナラ本塁打をマークしたのは今もってこの時の新田が最初で最後。この時の新田の快進撃を熱心な高校野球ファンは“ミラクル新田”と、今なお讃え続けている。

(高校野球評論家・上杉純也)

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「花咲舞が黙ってない」第3シリーズ「主演候補」は今田美桜のほかにもうひとりいた
2
フジテレビ・井上清華アナ「治らない顎関節症」と「致死量ストレス」の不穏な関係
3
佐々木朗希・佐藤輝明・堂林翔太の「欠陥プロ野球カード」に「マニア大量購入⇒高額転売」のウハウハ
4
テレビ朝日・斎藤ちはるアナ「ラグビー姫野和樹とお泊まり交際」に局内大歓迎の理由
5
「秘密音響兵器」でアメリカ諜報部員の脳細胞を損傷!プーチンが仕掛けた「ハバナ症候群」の戦慄現場