エンタメ

各界「伝説の師弟」(5)弟子・のむらしんぼ→師匠・弘兼憲史

 漫画家の多くは、デビュー前に他の漫画家のアシスタントをしていた過去を持つ。「つるピカハゲ丸」で80年代に「つるセコブーム」を巻き起こした、のむらしんぼ氏も、そんな一人である。

 大学時代に読んだ青年漫画に感銘を受けて、漫画家を志し、大学の「漫研」に所属したのむら氏が、企業イベントの似顔絵描きアルバイトをしている最中だった。

「30歳前後のヒゲ面の兄ちゃんが近寄ってきて、突然『漫研の人?』と。名前を聞くと『弘兼』と言うので、当時は有名ではありませんでしたが、まさかあのストーリー構成がすごい、弘兼さん!? とすぐにピンときました。著作を読んでいることを伝えると、『5時に終わるのね。じゃあ迎えに来るから』と」

 それが「島耕作」でおなじみの、師匠・弘兼憲史氏との出会いだった。

「そのまま先生のマンションに行くと、コタツを買うのをつきあわされて(笑)。そのお礼に手料理をふるまってくれました」

 それからすぐに、のむら氏の“弟子生活”が始まった。

「本当に居心地のいい場所でした。当時のアシスタントは、僕、のちの奥さんとなる柴門ふみ、他1名だけ。いつも先生が御飯を作ってくれて、皆でテレビを見ながら食卓を囲んで。特に味噌汁がうまかった(笑)。とにかく家庭的で待遇もよく、『間に合うから寝ていいよ、オレも寝る』と言っていたのに、先生1人起きて描いていたこともありました。あれにはジーンと来ました」

 ところが、アシスタント業で技術的なことは一切教わらなかったという。「その分、他では学べない編集者とのつきあい方や、漫画家としての社会生活の送り方など『漫画家とは何なのか』を学びました。話すことといえば、映画やドラマ、小説の話。例えば一緒にドラマを見る時も、先生はストーリー構成やカメラワークを意識して、全ての作品を監督の目で見ているんです」

 初めて触れる感性に感銘を受けたのむら氏は、さらに驚いたことがあった。

「『オレは漫画家でダメになっても、やりたいことがいっぱいあるから困らないんだ』と、先生がそう言ってデスクのいちばん大きい引き出しを開けると、400字詰めの原稿用紙に書いたシナリオがギッシリ詰まっていました。この人は漫画家以前に作家なのだな、と。どうりでストーリーがずば抜けておもしろいはずです」

 アシスタント生活は半年間だったが、卒業してから数十年たった4年ほど前、のむら氏は思うように仕事ができず、苦しんでいた。

「そんな時期、とある雑誌の編集長が弘兼先生にこんなことを言われたと。『しんぼのこと、よろしくお願いします』と‥‥」

 本物の師弟に過ごした時間は関係ない──。弘兼氏とのむら氏の関係が、師弟の神髄を物語っている。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
【戦慄秘話】「山一抗争」をめぐる記事で梅宮辰夫が激怒説教「こんなの、殺されちゃうよ!」
2
巨人で埋もれる「3軍落ち」浅野翔吾と阿部監督と合わない秋広優人の先行き
3
神宮球場「価格変動制チケット」が試合中に500円で叩き売り!1万2000円で事前購入した人の心中は…
4
永野芽郁の二股不倫スキャンダルが「キャスター」に及ぼす「大幅書き換え」の緊急対策
5
「島田紳助の登場」が確定的に!7月開始「ダウンタウンチャンネル」の中身