芸能

“日本のリヴァプール”博多スーパースター列伝<第1回>井上陽水(2)

20140102_0109e

 CBS・ソニーで3枚のシングルを発表したものの、まったく鳴かず飛ばず。マネジャー的な役割も兼ねていた川瀬は、ホリプロという大手事務所ゆえの“壁”も感じる。

「営業伝票を切るのでも、1万円以下の仕事はダメって世界。だからクラブやスナックの弾き語りとか、彼にはきつい仕事もさせられていました」

 2年が過ぎて売れなければ人員整理の対象となる。まず川瀬は新しいレコード会社を探し、ポリドールのディレクター・多賀英典に話を持ちかける。そしてホリプロの堀威夫社長(当時)にも直談判した。

「こういうジャンルの音楽は『営業』で売れる形じゃない。学生プロモーターとかのつながりが大事です」

 そのため、スーツ着用のルールを解除してもらい、社内の別セクションとして「カレイドスコープ」の名義も用意してもらう。

 また移籍したポリドールでは本名の「井上陽水」に改名。本来の読みは「あきみ」なのだが、あえて「ようすい」と読ませた。さらに多賀との出会いは大きかったと川瀬は言う。

「僕や陽水はサウンド重視だったけど、根が文学青年の多賀さんは『詞の深さ』を要求した。それで陽水もボブ・ディランやニール・ヤングの詞を研究したりしてました」

 陽水としての初シングルとなった「人生が二度あれば」(72年3月)は、初期の傑作として名高い。年老いた父や母のことを歌っているが、この詞に対して多賀は苦言を呈した。

「まだお父さんは生きてらして、後悔なんかしてないだろう。お前がよけいなお世話で、人の人生を左右するような失礼なことはないんじゃないのか!」

 陽水は衝撃を受け、以来、真剣に「詞の重要性」と向き合う。その後のシングルが「傘がない」(72年7月)であり「夢の中へ」であったことは、大きな変革である。例えば「傘がない」は、冒頭で「都会の若者の自殺増加」を振っておきながら、それよりも「君に会いに行くための傘がないほうが切実」と歌う。

 この時期に陽水をインタビューした音楽評論家・富澤一誠は、こんな言葉を耳にしている。

「ポール・マッカートニーがあのままの形だったら日本では売れていない。それを日本風にしたのが僕」

 それは、自身の内面を掘り下げる詞の部分を指してのことだった。

 陽水は、ソニー時代には発売の機会がなかったアルバム「断絶」(72年5月)や「陽水II センチメンタル」(72年12月)を発表するたび、評価を高めてゆく。川瀬もまた、あえてホリプロと別名義の社名にしたことで地方とのつながりを実感する。

「九州を何カ所か回って、今で言う“出待ち”みたいな人が着実に増えていった。気に入ってくれた大分・日田のレコード店主はコンサート開催を申し入れてくれて、しかもその店だけでアルバム100枚のオーダー。まだ全国でも1000枚くらいしか売れていなかったのに、ですよ」

 それは“噴火”が近いことを意味していた‥‥。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    暑いと思ったら顔が赤い?恥ずかしい赤ら顔は化粧水でケア

    Sponsored
    91796

    ゴールデンウィークも終わり、これから夏に向けて徐々に気温が高くなってくる季節ですね。スポーツやイベントなど出かける機会が増えてくる方も多いのではないでしょうか。そんな楽しい季節ですが、気候の変化による肌トラブルも気になります。日中の日差しか…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , , , |

    高血圧・高血糖・高血中脂質が1つでもあると、動脈硬化につながる「トリプルリスク」になる!?

    Sponsored
    102085

    いま、アラフォー世代を中心に、「トリプルリスク」の危険性が叫ばれている。「かくれ肥満」を提唱し、メタボに警鐘を鳴らした医師の岡部正さんによると、「高血圧・高血糖・高血中脂質のうち、どれか1つでも該当すると他の2つも悪くなる可能性がある」そう…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , , , |

    認知症の予防に期待!? 世界初、九州大学がプロポリスの認知機能向上効果を実証!

    103760

    九州大学大学院歯学研究院の武洲准教授と倪軍軍助教の研究グループは、中国青海省人民病院との共同研究において、ブラジル産プロポリスが中国チベット高原に住む健常な高齢者の認知機能低下並びに全身性炎症の改善効果をもたらすことを明らかにした。臨床研究…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
整形を命令、タメ口に大激怒…GACKT、元恋人の暴露で露呈した異常な下半身癖
2
嵐・二宮和也が「ビール腹」に!活動休止までの2年を乗り切れるか?
3
胸の渓谷がくっきり!土屋太鳳のFカップ「タオ胸」が過去最高の仕上がり
4
花田優一、各局からの“異例の特別扱い”は「河野景子のご機嫌取り」!?
5
真木よう子に深田恭子…“着衣バスト”を強調するドラマが増える理由