社会

たった1人のクレームで…長野市「公園廃止」大問題を理解するための5つの「なぜ?」ポイント

 各週刊誌やメディアで取り上げられている長野市の公園廃止問題は、賛否両論が真っ二つに割れている。たった1人の上級市民、地元の名士である国立大学工学部名誉教授の苦情がきっかけで、子供たちの遊び場が奪われるというのだから、何ともモヤモヤしてくるのだ。何が我々をモヤモヤさせるのか、整理してみよう。

【モヤモヤポイント1:この公園の騒音はどれくらいなのか】

 読者が最もモヤモヤするのは、客観的な数値が出てこないまま「騒音があったかのように」報じられていることだろう。客観的な数値が出てこないのは当然だ。教授夫妻から18年間にわたり騒音苦情が寄せられていながら、長野市には騒音測定の記録が全くないのだという。

 12月9日の長野市議会の一般質問でも公園廃止問題が取り上げられたが、長野市は公園の騒音レベルを測定した記録が存在しないと返答。住民から長年にわたり騒音苦情が出ており、当事者の名誉教授夫妻は公園で遊ぶ子供たちとトラブルまで起こしていながら、騒音調査もすることなく公園廃止を決めたのだから、随分と乱暴な話だ。

【モヤモヤポイント2・寒冷地仕様の豪邸でそんなに外の騒音が聞こえるものなのか】

 一部週刊誌によると、教授夫妻は後からできた公園と、公園で遊ぶ近くの児童センターだけでなく、教授夫妻が引っ越す前からあった近隣の小学校にも騒音苦情を訴えていたとされる。

 東京や大阪などの住宅密集地で騒音問題が起こるのなら、理解もできる。だが、公園廃止騒動の渦中にあるのは、冬季五輪を開催した寒冷地の長野市だ。北海道や東北、北信越に暮らす人ならわかると思うが、北国の家は壁や天井が厚く、断熱材がギッシリ詰まっている寒冷地仕様で建てられる。窓も冷気を遮断するため断熱防音仕様の二重窓にするところが多い。生活音や公共施設の騒音が気になる場合は、オプションとして防音フイルムなどを追加することも可能だ。

 二重窓にせずとも、寒冷地の邸宅には機密性の高い窓がつけられているので、外部の音は聞こえにくい仕様になっている。それなのにたった1軒、工学部の名誉教授の邸宅だけが18年間も騒音に悩まされていたのはなぜなのだろうか。

【モヤモヤポイント3・公園の周りになぜ柵をつけないのか】

 名誉教授は騒音だけでなく、子供たちが遊ぶボールが公園の外に出る、ボール遊びをさせるな、との苦情も長野市に寄せていた。このため長野市は、柵の代わりに防球ネットの設置を決め、名誉教授にその旨を報告。すると今度は「防球ネットの設置は公園の景観を損ねる」という新たな苦情が名誉教授から寄せられたという。

 公園廃止に関連して長野市に情報公開請求をした小泉一真市議によると、

「情報公開請求した資料によれば、住民からクレームがつき、結局、防球ネット設置が施工されなかった事実があります」

 名誉教授は大いなる誤解と傲慢に満ちているようだが、防球ネットは名誉教授のためにつけるものではない。子供たちがボールを追いかけ、園外に出た時に事故に遭わないため、子供の安全を守るためのものだ。

 たった1人の老人の言いなりになり、子供の事故防止工事をやめた長野市の対応は民主的ではない。デイサービスなど老人の送迎車には文句を言わず、反論できない立場の子供と児童センター、小学校だけが執拗な苦情対象になっている印象だ。一連の長野市の対応について質問状を送ったが、長野市役所の広報公聴課と公園緑地課をたらい回しにされ、期日までに回答はこなかった。

【モヤモヤポイント4・不審者になぜ警察が対応しないのか】

 各週刊誌報道によれば、名誉教授夫妻は公園で遊ぶ子供たちを看板の前まで連れて行き、注意したという。子供や親の視点に立ってみれば、公園で遊んでいた子供をひき離し、別の場所に連れて行ってウルサイと恫喝するのは、トラウマものの恐怖体験である。東京都内なら完全に、警視庁から子供を持つ親に「不審者情報メール」が一斉送信される「不審者案件」だろう。

 長野市と荻原健司市長は、名誉教授夫妻の常軌を逸した行動で子供たちが恐ろしい思いをしていた時には警察に相談をせず、公園廃止が明るみになってから名誉教授の身の安全を案じる言動に終始している。忖度があまりに過ぎやしないか。

【モヤモヤポイント5・苦情は名誉教授に相応しい品格ある言動か】

 渦中の人物は国立大学の工学部名誉教授だが、住宅地に新たに公共施設を作るという、全国どこでも起こりうる都市開発の問題を解決しようとする姿勢は伺えない。国立大学の工学部名誉教授に相応しいアカデミズムや品格、教育者の資質はどこへいったのか。同名誉教授と同じ大学の医学部教授に意見を聞いた。

「我々だって夜中に急患を診て、着替えや風呂に入りに自宅帰ることもありますが、学校などに子供の声がうるさいと苦情を入れることなど考えたことはありません。自宅を防音仕様にすればいいだけです。騒音がうるさいなら研究者として科学的、建設的に前向きに解決していく。それが『教授』『名誉教授』ではないですか」

 名誉教授とは学校教育法に基づき、大学での教育活動が認められた人物に大学独自の基準で与える称号である。

 長野市の譲歩案にはことごとく反対し、18年間も苦情を言い続けるような老人に名誉教授を授与した大学に「はたして教育者としてふさわしい人物なのか」「名誉教授の称号を剥奪する予定があるか」を質したところ、「長野市青木島遊園地に関しまして、本学が意見を述べる立場にないことから、コメントは差し控えさせていただきます」と、論点をずらした返答がきた。

 長野市の繁栄を築いた善光寺は、古くから性別、年齢、身分を問わず「無差別平等の救済」を説き、広く庶民の信仰を集めた。たった1人の上級国民の言いなりになり、反論できない子供達には理不尽な思いをさせる荻原市長は、善光寺で喝を入れてもらってはいかがか。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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