社会

屋敷に侵入して名刀を盗み出し女まで連れ帰った/実在した「忍者」の禁断秘史(3)

 現代でもあまりにできすぎる部下は、上司にニラまれる。だが、戦国乱世の頃には、命まで奪われることもあった。加藤段蔵という忍者、幻術使いだ。段蔵は江戸時代に流行した軍記物などに「とび加藤」「鳶加藤」「飛加藤」などの名前で登場し、大ブレイクしたが、実はその頃の人ではない。

 活躍したのは、川中島の戦いで上杉謙信と武田信玄が激突していた時代だった。段蔵は方々で、一頭の牛を丸呑みにする「呑牛の術」などといった幻術を披露し、ウワサになっていた。

 そのウワサを聞きつけた長尾謙信(のちの上杉謙信)が、段蔵を呼び出した。謙信はこの頃から忍者を多く抱え、諜報活動に従事させていたため、興味を示したのだ。

 段蔵は「一尺余(約30センチ)の刀があれば、塀や堀を飛び越えて城中に忍び入ることができる」と豪語したので、謙信は腕試しとして重臣・直江山城守景綱の屋敷に侵入し、名刀を盗み出すよう命じた。

 山城守は家の守りを固めて村雨という名前の番犬まで用意したが、段蔵はそれを毒殺。名刀を手に入れただけではなく、召し使いの女子まで連れ帰ったという。

 その鮮やかな手口を恐れた謙信は段蔵を危険視し、山城守に身柄を預けて密に殺害を命じた。だが段蔵は陶器を沢山並べさせて、それをからくり仕掛けの傀儡(くぐつ)のように操って目を引かせ、術が終わって陶器の片付けをしているすきに逃亡。ライバルの武田信玄の配下・跡部大炊助を頼り、信玄に仕官した。

 その数カ月後、武田家では家宝の古今集が行方不明になる事件があり、探索の結果、段蔵が犯人と判明。「信玄を殺して、旧主の長野業正恩に報いようと考え、寝所の物を盗んだ」と白状したため、殺害されたという。

 変幻自在の技で名をはせた男だが、できすぎたばかりに、身を滅ぼすことになったようだ。

(道嶋慶)

カテゴリー: 社会   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
「京都崩壊」の信じがたい現実…外国人観光客専用都市に激変した「不気味な風景」
2
商品価値が落ちたヤクルト・村上宗隆「メジャー計画変更」で大谷翔平と同じ道を
3
土壌ラドン濃度・衛星観測・上空発光…火山噴火と大地震「前兆キャッチ」の新技術がスゴイ!
4
山尾志桜里の「公認取り消し」騒動を起こした玉木雄一郎は「榛葉幹事長人気に焦った」って!?
5
フジテレビ・山本賢太アナが行方不明に!? 「代役」登場と「謎のテロップ」