社会

【大阪】人工呼吸器を止めた医師の書類送検は「妊婦を断る老害医療」のなれの果て

 世間が「新型コロナ第4波」の報に震えていた2021年3月、新型コロナで入院中の男性患者の人工呼吸器を止めたとして、大阪府警は9月4日、大阪府立中河内救命救急センターに勤務していた男性医師を、暴行の疑いで書類送検したと発表した。

 大阪府警によれば、この医師は2021年3月29日、当時60代の男性患者の人工呼吸器を2分間止める暴行を加えたという。患者は人工呼吸器を外されると呼吸状態が悪化したが、その後、別の医師の処置で回復。医師が書類送検された同日、読売テレビのインタビュー取材に顔と名前を出して応じている。

 大阪府警は起訴を求める「厳重処分」ではなく、大阪地検に起訴か不起訴かの判断を委ねる「相当処分」の意見を付けた。

 同センターは事件から半年後の2021年秋に倫理委員会を設置し、「患者に故意に苦痛を与える行為で、重大な倫理違反」として、同年12月に、医師の戒告処分を決定した。ところが医師は倫理委員会に対し、「気管切開が最善であると判断した」と説明。戒告処分の撤回を求める訴訟を、大阪地裁に起こしていた。

 医師は人工呼吸器を止める前、その使用をめぐって患者本人とトラブルになっていたという。人工呼吸器を装着していて話せない患者に対し、医師が筆談で「呼吸器がないと無理やから、呼吸器止めてみます?」と投げかけると、男性が「止めてみろ」と返答していたという。

 この患者の言葉にキレた救命救急医の対応が「暴行にあたるかどうか」は、これから刑事と民事で検証されることになる。

 このトラブルの最大の被害者は、同じ救急救命センターのベッドに横たわる他の患者たち、搬送先を探していた救急隊と患者だろう。トラブルのせいで医師の処置が遅れた患者もいるだろうし、搬送先が決まらない患者と救急隊員、さらに出払ってしまった救急車が戻るのを待つ患者にまで、波状的に迷惑がかかった。

 しかも当時はコロナ第4波の真っ只中。大阪府内の保健所では保健師、助産師、看護師が他の都道府県と同じように、府内の医療機関に妊婦の入院受け入れを最優先にお願いしていた時期だ。お腹の子供を守るために救命センターでの治療を切望していた妊婦を同センターが受け入れていれば、こんなトラブルなど起きなかった。

 救命救急センターの使命は1分でも早く、1人でも多くの患者を救うことである。総じて医師に反抗的な態度をとり、治療の説明と同意に時間と労力を費やす高齢者よりも「医師に協力的な患者」を優先的に受け入れ、ベッドの回転率と治療効率を上げ、受け入れ患者数を増やす。これは救命救急の本懐であり、「患者を選り好みする」「高齢者切り捨て」などの非難には該当しない。ましてや府立病院ならなおさら、受け入れ先のない妊婦を優先すべきだっただろう。

 ところが日本の病院経営者は妊婦と赤ん坊のためにベッドを空けておくのをよしとせず、高齢者を受け入れてきた。しかも医師や看護師とトラブルを起こすほど、元気な高齢者を。高齢者に人工呼吸器を装着してダラダラと長く入院させている方が、病院は儲かるからだ。

 そうして「病院経営者が金儲けのため、妊婦を後回しにして、高齢者を優先した」結果、起きたのが2021年8月、妊婦の搬送先がなく新生児が亡くなった悲劇だ。新型コロナに感染した千葉県柏市の妊娠29週(8カ月)の30代女性が、入院先が見つからないまま、医師不在の状態で自宅での出産を余儀なくされ、自宅で生まれた新生児は亡くなった。

 影響はそれだけにとどまらない。今、日本中の病院で処方薬が不足している。3年間の新型コロナ治療で死ぬのを待つだけの高齢者にもジャブジャブと薬を使った結果、咳止め薬や気管支拡張剤の在庫がなくなってしまったのだ。

 助かる見込みのない高齢者にまで無駄遣いされた薬代を払っているのは、高齢者本人と家族ではない。新型コロナは公費負担なので全額、我々納税者と健康保険加入者が肩代わりする。そして金を払った自分たちや子供が飲む薬はなく、今夜も止まらぬ咳に苦しめられるのである。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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