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年末年始に読んでみたい…コタツでぬくぬくとしながら読む「極寒本」厳選7冊(1)

 う~、寒い。外は寒い。こんな季節は暖かい室内でコタツにでも入って本を読むのが一番だ。それもとびきり寒い本を。北海道の雪山を舞台に描く山岳ミステリーから戦国歴史小説など極上の7冊を紹介しよう!

 寒いといえば冬山だ。雪と氷と強風の中、重い荷物を背負って山を登ったり降りたり。マゾヒストかね、クライマーは。

 笹本稜平「分水嶺」(1836円 祥伝社)は厳冬の北海道、大雪山を舞台に描く山岳ミステリーだ。

 主人公は若い写真家・風間。ファッションや広告業界で売れっ子だったが、亡き父と同じ山岳写真の道を歩み始める。父が撮り残した写真を撮るべく、真冬の大雪山に入った風間はそこで怪しい男・田沢と出会う。

 田沢は殺人で服役、仮釈放中だと言う。彼は絶滅したはずのオオカミを探している。実は殺人事件の背景もそこにあるらしい。大規模なリゾート開発が計画されていて、もし実行されるとオオカミは居場所を失う。そこで田沢が開発業者の幹部を殺したというのだが。

 田沢の事件は冤罪なのか、それとも本当に犯人なのか。戸惑う風間が父のリュックサックを開けると、底から汚れたサバイバルナイフが出てくる。父と田沢、そして事件の間には、どんなつながりがあるのか‥‥。

 開発業者、警察、オオカミを研究する学者。敵と思しき者が次々と現れる。しかし最も手強いのは自然だ。真冬の大雪山の雪、風、雪崩、そして寒さ。小説の中は寒いが、読んでいるこちらは熱くなってくる。

 日本でいちばん寒いのは北海道。北にあるんだからあたりまえ。じゃあ、北海道の中でいちばん寒いのも、最北端の稚内? いやいや、違うんだな。稚内の最低記録はマイナス19.4度(1944年1月30日)。日本の最低記録は、北海道の内陸、旭川のマイナス41.0度(1902年1月25日)。こんな話がてんこ盛りなのが椿かすが「漫画・うんちく北海道」(907円 メディアファクトリー新書)。タイトル通り、全編北海道に関するうんちくが詰まったコミックエッセイだ。ちなみに私は旭川出身なのだが、知らないこともたくさん載っている。

「分水嶺」の舞台にもなっている大雪山国立公園の面積は、22万6763ヘクタールで日本一大きな国立公園。年間雪日数も日本一の年間平均125.9日。なんと1年の3分の1は雪が降っているのだ。へえ、知らなかったよ。一方、年間の真夏日(最高気温30度以上)日数はたった8日で、もちろん全国47都道府県中最少。

 ところがところが、「冬の室内温度は北海道が全国でいちばん高い!」と主人公、雲竹雄三は叫ぶ。なんと全国平均が18.85度であるのに対して、北海道は20.73度なのだそう。冬の北海道は、短パンTシャツでサッポロビールをガブ飲みだべさ。

 気になる情報が載っている。なんと「さっぽろ雪まつりにカップルで行くと別れる」というジンクスがあるのだそうだ。この冬、旅行を計画している人は気をつけよう。

◆プロフィール 永江朗(ながえ・あきら) 書評家・コラムニスト 58年北海道生まれ。洋書輸入販売会社に勤務したのち、「宝島」などの編集者・ライターを経て93年よりライターに専念。「週刊朝日」「ダ・ヴィンチ」をはじめ、多くのメディアで連載中。

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