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記事全文を読む→由紀さおり「美空ひばりと越路吹雪はずっと憧れ」/テリー伊藤対談(3)
テリー この55年の中で、由紀さんが尊敬するシンガーって言うと、誰になるんですか。
由紀 私は美空ひばりさんと越路吹雪さんです。由紀さおりでデビューした時に、もちろんお二人とも現役でバリバリ活躍されていて。その時からずっと今も変わらないですね。
テリー ひばりさんは何が素晴らしいんですか。
由紀 よく覚えてるのは、ひばりさんのハワイのコンサートに、まだ若手だった私とディック・ミネさんがゲストで呼ばれたんですね。それで、ひばりさんは稽古で「柔」を歌ってらしたんですけど、あんなに何回も歌っている歌なのに、ずっと何度も稽古されてるんですよ。
テリー 何か気になることがあったんですかね。
由紀 その時がT字型の特設ステージだったんですけど、ここからここまでが何歩かっていうのを数えながら何度も繰り返してるんです。ここからここまで歩いて、クルッと回るとイントロが出るみたいな、そういうお稽古をしてるんですね。
テリー なるほど。
由紀 だから私、それを見て、また尊敬しちゃったんです。ひばりさんってジャズも歌うし、都ど々ど逸いつもお上手だし、ほんとにオールマイティな方じゃないですか。それでお芝居もするし、映画にも出られて、「真っ赤な太陽」まで行っちゃうわけですから。
テリー ねぇ。ミニスカート穿いて、ゴーゴーダンスですからね。
由紀 やっぱりあの貪欲さというか、みんなを自分に引き寄せちゃう力ってほんとにすごいな、見習いたいなって。「あんなふうにカバーを歌うんだ」って、そういうことも教えてもらった気がしますよね。
テリー 越路さんは?
由紀 越路さんは華やかな感じです。サンローランの衣装を着て舞台に出るなんて、越路さんが初めてだったし。別に音程がどうとか、この歌い出しが正しいとか正しくないとかっていうのはどうでもよくて、もう越路さんにしかできない、きらびやかな世界を音楽で作ってましたよね。
テリー ルールがなかったですよね。僕みたいなディレクターの立場から見ると、カメラのリハーサルなんかまったく関係ないから。
由紀 ほんとに。本番前は楽屋で「今日はできない。嫌だ、嫌だ」って言ってらっしゃったらしいですけど、「さぁ、5分前よ」って声がかかると、フッと気が変わって、ポーンと出て行くっていう。
テリー 基本的に真面目だったんでしょうね。
由紀 だと思います。幕が上がる前は不安で「今日もちゃんと歌えるかしら」みたいな感じだったって聞きましたけど。
テリー そういうのは由紀さんにもあるの?
由紀 ありますよ。やっぱり緊張って、ある種大事なことでもありますし。
テリー 歌い手の由紀さんにとって、今の時代ってどうなんですか。
由紀 今の時代はもう何でもありっていう感じですから。生の音で歌うことがすべてではなくなってしまって、コンピューターで音を作って、それに乗って歌うという、どっちかと言えば日本語の情感みたいなことよりも、器楽曲(楽器だけで演奏される曲、いわゆるインスト)として歌ってるような、そういう音楽が多い気がしますね。
テリー それは寂しい?
由紀 私、よく言うんですけど、オーケストラなんかで歌う時は、人間の呼吸そのものが音楽になるんです。お稽古や本番で何度も同じ曲をやってもテンポ感とか、みんなとのひとつになり方とか、同じものは2つとありませんから。やっぱりアナログの時代にずっと歌ってきた私としては、そういう音楽が自分の音楽だと思ってますし、これからもずっとそういう音楽をやっていきたいですね。
ゲスト:由紀さおり(ゆき・さおり)1946年、群馬県生まれ。幼少期から児童合唱団に所属し、童謡歌手として活躍。1969年、「夜明けのスキャット」でデビューし、ミリオンセラーに。1983年公開の「家族ゲーム」では「日本アカデミー賞・優秀助演女優賞」を受賞。2012年に紫綬褒章、2019年に旭日小綬章を受章。今年デビュー55周年を迎え、記念シングル「人生は素晴らしい」、3枚組ベストアルバム「由紀さおりベストオブベスト~ 55th anniversary」発売中。また、「由紀さおり 55thコンサート ~新しいわたし~」開催中。
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