芸能
Posted on 2024年12月09日 09:59

待合室に1万円札が放置されていた村西とおる監督「ダイヤモンド映像」の栄枯盛衰

2024年12月09日 09:59

 2019年、2021年にNetflixで配信された「全裸監督」の大ヒットのおかげで、村西とおる監督の名前は若者にも認知されるようになった。

 筆者は村西監督が1988年にダイヤモンド映像を設立した時から、取材に訪れていた。事務所兼住居だった白亜の洋館はまさに御殿のようで、とある国が大使館として使用していた建物だった。地下を含め、5つのフロアがあったと記憶している。2階のリビングにはよくメンテナンスされた大きな水槽が置かれ、高級熱帯魚が群れをなして泳いでいた。

 筆者は連載記事のため、月に2回程度、事務所を訪れたいたが、全盛期はなにしろ人の出入りが激しかった。ほとんどが女優を売り込もうとする事務所の関係者だろう。

 驚いたのは、待合室に1万円札が2~3枚、放置されていたことだ。それは一度や二度ではなかった。どうぞ持っていってください、とばかりに、無造作に放置されていた。スタッフに聞くと、

「キャッシュでやり取りし、そのうちの何枚かが置き忘れられていたのでしょう」

 全盛期は年商100億円に達していたとも言われ、数万円程度は気にも留めなかったのだろう。

 こうした状況が3年ほど続いていたが、1991年頃からなんとなく雰囲気が変わってきた。ちょうどVシネを手掛けるようになったからで、知っているスタッフが一人、二人と消え、水槽は苔だらけになっていた。

 その後、村西監督は衛星事業に乗り出した。ただ、事務所の関係者からは、

「衛星事業はかなり厳しい状況です」

 と聞かされていた。水槽の熱帯魚は消え、メンテナンスがされずに、苔で真っ黒になったまま放置されていた。

 筆者はその後、担当を外れたが、数カ月後に約50億円の負債を抱えて倒産したことを、ニュースで知った。

 この時、筆者はなぜか、1991年頃に村西監督が発した言葉を思い出した。「今後、撮ってみたいものはあるか」という質問に対し、いつになく真剣な表情で、

「いつか死をテーマにした映画を撮ってみたい。それはずっと考えていたんです」

 という思いがけない言葉が返ってきたのだ。「生きるか死ぬか」という起伏の激しい人生を送ってきた村西監督には、常に「死」が身近にあったのかもしれない。

 しかし、筆者の心配は杞憂に終わった。多額の借金の返済に追われ、死ぬような思いをしたはずの村西監督は健在である。いつか死ではなく、驚くべき生命力の秘密をテーマにした映画を撮ってほしいと思う。

(升田幸一)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/7/22発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク