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記事全文を読む→ホントーク〈古舘伊知郎×パトリック・ハーラン〉(1)天才じゃないから相当な努力をした
「伝えるための準備学」古舘伊知郎/2200円・ひろのぶと(株)
「音速の貴公子アイルトン・セナ」や「人間山脈」など、フリーアナ・古舘伊知郎氏による数々の名実況&名フレーズは〝徹底した準備〟にあるという。稀代のしゃべり屋が、スキルから心構えといった、トークの秘密を明かす。
パックン プロレスやF1の実況、司会やニュースキャスターとして第一線で活躍する古舘さんが、準備することのスキルや哲学を語った本書、とても読みごたえがありました。
古舘 パックンにそう言ってもらえるとうれしいです。
パックン この本では「自分は天才じゃない」と書かれていますが、どうしてそう思われるんですか?
古舘 天才の実況中継をやってきたからかもしれませんね。例えば、アントニオ猪木さんは、若い時から本当に強い、弱いというレベルを超えた大天才です。F1ドライバーのアイルトン・セナもやっぱり天才でした。僕はそういう人が、いかにすごいかを実況であおる役です。
パックン 天才たちも戦いの場に立つまでの準備をしているんですか?
古舘 もちろんです。猪木さんは、死ぬほどトレーニングをしていました。でも、一生懸命トレーニングをして準備したことをブッ壊して、とんでもないアドリブ試合をしたりします。セナも「アウト・イン・アウト」のコーナリングで、ホンダのエンジンスタッフと100分の1秒のタイムを上げるところまで、徹底した準備をする。しかし本番ではそれを捨てて、自己流のドライビングをしてタイムを上げるんです。
パックン 天才は準備通りにやらないんですね。立川談志師匠はどうですか?
古舘 談志さんは天才すぎます。古典落語は覚えているのに、カッコつけて自分が準備して覚えたことも、否定してみせるんです。本番でわざと忘れて、ドタバタになって「もう1回やり直すから聞け」と言われたこともありました。
パックン 準備した姿を見せるのはカッコ悪いんですね。
古舘 だから僕は「自分は天才じゃない」というところから、準備に力を入れるようになりました。
パックン でも、この本で古舘さんの準備はすごい、と思いました。「準備の天才」だと思います。
古舘 今、自己肯定感に包まれました(笑)。
パックン アドリブもすごいですよね。
古舘 僕にとっては準備がすべてで、面白いことを決してアドリブで言えないんです。プロレスラーのアンドレ・ザ・ジャイアントの「人間山脈」「一人民族大移動」というキャッチコピーも、彼の巨大さを観察したり、心の中で描写したり、取材したりしているうちにポロッと出ました。
パックン 使われなかったデッドストックもたくさんあると思いますが。
古舘 その時はダメでお蔵入りしたものが、ビンテージものとして再登場することもあります。だから、本番で失敗したりスベッたりしても、それは次のライブ、次の本番への準備だと思ってやっています。
パックン なるほど。古舘さんはセナの「音速の貴公子」など、キャッチコピーの天才でもありますけど、もしご自身につけるとしたら?
古舘 さっきパックンが名付けてくれた「準備の天才」ですね(笑)。
ゲスト:古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年東京生まれ。立教大学卒業後、77年テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「ワールドプロレスリング」などを担当。84年にフリーとなり「古舘プロジェクト」を設立。04年4月から12年間「報道ステーション」(テレビ朝日系)でキャスターを務める。19年、立教大学経済学部客員教授に就任。「喋り屋いちろう」など著書多数。
聞き手:パトリック・ハーラン 1970年、アメリカ・コロラド州生まれ。93年、ハーバード大学を卒業後来日。97年、吉田眞とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。NHK「英語でしゃべらナイト」「爆笑オンエアバトル」で一躍人気者に。「報道1930」(BS-TBS)でコメンテーターを務めるなど、報道番組にも多数出演。12年から東京工業大学非常勤講師に就任。
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