社会

ホントーク〈井上薫×名越健郎〉(3)「裁判員制度」は日本に馴染まない

名越 井上さんは「つぶせ! 裁判員制度」(新潮社)という本も出版されていますが、僕も裁判員制度は日本社会にはなじまないと思っています。

井上 そもそも日本は、国に対する不信の念があって作られた制度ではありません。アメリカやイギリスの陪審制は、国王が指名した裁判官が国王の利益を守っていたため、国民の権利を守るために陪審を作りました。権力に対する庶民の抵抗です。

名越 アメリカは陪審員の全員一致で判決を出しますが、日本も同じですか。

井上 裁判官が3人、裁判員が6人で多数決です。裁判員は法律もよく知らなくて経験もゼロなので、裁判官が決めたことを追認する以外にありません。

名越 我々は今後、報道される裁判のどこに注目したらいいのでしょう。

井上 一番の着眼点は、裁判所の権限です。司法権というのは、具体的に提起されたその事件について判決するだけで、こういう制度を改めたほうがいいとか言う、そんな権限はありません。

名越 国会よりも権限が強い感じがします。

井上 国会は日本全国に通用する法律を設定できますからケタ違いの権限があります。それなのに最高裁が判決を下すと「あなたたちが作った法律はダメだ」と、国会が負けたような報道がされます。

名越 最後にお聞きします。井上さんがこの本で一番読者に伝えたいことは何ですか。

井上 最高裁の独裁です。この本には裁判所の制度を論ずる材料がたくさん入っています。ぜひ、問題意識を持って読んでいただきたいと思います。今後は司法の一番の肝についての本を書きたいと思っています。

名越 次回作も期待しています。

ゲスト:井上薫(いのうえ・かおる)1954年東京都生まれ。78年東京大学理学部化学科卒業、80年同大学院理学系研究科化学専門課程修士課程修了。83年司法試験合格。86年判事補任官。96年判事任官。06年判事退官。07年弁護士登録。「裁判官の横着 サボる『法の番人』たち」「『捏造』する検察 史上最悪の司法スキャンダルを読み解く」など著書多数。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学客員教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。

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