社会

ホントーク〈春名幹男×名越健郎〉(2)“二重スパイ”がトランプに接近

名越 ウクライナ侵攻が始まって3年以上が経ち、英国防省はロシア軍の死傷者が100万人を超えたとしています。しかし、プーチン大統領は戦いをヤメませんね。

春名 プーチン大統領は、最初からウクライナのゼレンスキー大統領を殺害して、傀儡政権を打ち立てることがこの戦争の狙いなのです。

名越 本書では、プーチンがソ連解体への「リバンチズム(報復主義)」で開戦に動いたと書かれています。

春名 ソ連崩壊後、多くのロシア人は飢えに苦しみました。あの時、米国が民主化の経済支援をしていたら、欧米に対する恨みはなかったでしょう。しかし、何といっても「NATO(北大西洋条約機構)」の東方拡大が決定的でした。

名越 旧東欧諸国やバルト三国がNATOに加盟する動きですね。90年にベーカー米国務長官は、ゴルバチョフとの会談で「1インチたりとも東方に領域を拡大させない」と表明しました。ところが、この口約束が守られないことなどから、プーチンは恨みを強めたのですね。最近、トランプ大統領がロシアとウクライナの停戦仲介を始めましたが、明らかにプーチン寄りです。

春名 トランプ大統領とロシアとの関係は以前から深い。彼は大成功した不動産王と言われますが、大統領就任前にはホテルやカジノを6つも倒産させています。そのため、米国内の銀行はいっさい融資してくれない状況でした。そこにセイターと名乗るロシア系米国人が近づきました。

名越 ニューヨークのトランプタワーに事務所を持った男ですね。

春名 そうです。彼はCIAとKGBの“二重スパイ”と言われ、トランプ大統領の子供らをロシアの大統領官邸・クレムリンに招待するなど、プーチン大統領と親しいといった噂もありました。そのセイターがトランプ大統領にコンドミニアムを作らせ、ロシアの富裕層に投資させたことで、彼は経済的に復活できたそうです。

名越 セイターを間に挟んで、かなりの大金が動いていそうですね。プーチン大統領に弱みを握られています(笑)。

春名 21年に大統領を退任してからの浪人中、プーチン大統領と少なくとも7回は電話会談したとの情報があります。ただし、会話の中身は情報流出を警戒しているため、ほとんど表に出てきません。18年のヘルシンキでの会談後も、通訳のメモ帳を取り上げたとボルトン大統領補佐官が証言しています。

名越 プーチンとの会談内容は、いっさい公言するなということでしょう。

春名 もうロシアへの制裁といった話は聞こえなくなりました。彼はプーチン大統領を制裁できる立場にはありません。

ゲスト:春名幹男(はるな・みきお)1946年京都市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。国際ジャーナリスト。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て、ワシントン支局長。07年退社。07~12年名古屋大学大学院教授・同特任教授。10~17年早稲田大学大学院客員教授。94年度ボーン・上田記念国際記者賞、04年度日本記者クラブ賞、21年度石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学客員教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。

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