社会

ホントーク〈三木義一×名越健郎〉(2)政治団体の設立で相続税をごまかす

名越 三木さんは税金専門の弁護士として活動されていますが、09年からは民主党政権時代に政府税制調査会の専門家委員を務められていました。

三木 民主党議員の方たちに、日弁連の代表として税に関する勉強会をやっていた縁が始まりです。名越 その後、青山学院大学の学長(15年~19年)に就任されています。

三木 学長になる予定はなかったんですが、民主党政権が早く終わってしまったので(笑)、その後は教授会に出ていました。そうしたらいろいろな問題が見えてきて、発言しだしたら、学長選挙に出なければいけなくなっちゃいました(笑)。

名越 今では税金を巡る訴訟の弁護士として活動されています。本書でも消費税や所得税など税の基本から政治家のパーティー券購入問題について言及していますが、安倍晋三元首相の夫人に関する相続税の話も興味深かったです。2億円を超す政治資金を返納することなく、受け継ぎました。

三木 お子さんがいらっしゃらないので、夫人である昭恵さんがすべて相続されるのは問題ありません。しかし、安倍元首相の政治団体を継承する資格が、政治家ではない昭恵さんにあるのでしょうか。日本の政治家は団体を作って相続税をごまかしてきました。安倍一族もそうしてきたようですが、そこをしっかり規制しないとダメだと思います。

名越 パーティー券の売り上げにしても、何かごまかしている気がします。

三木 政治団体が開くパーティーは収益事業のように見えますけど、政治活動だとして課税されません。政治家は僕らのリーダーだから、真っ先に正しく税を負担してほしいのですが、自分たちだけ有利になるよう、常に抜け穴を作ってきました。これが国民から信頼されない一番の原因だと思います。

名越 外国に住む日本人夫婦の話ですが、夫の死後、妻は遺族年金を受給していました。ところが、国税庁から相続税を納めるよう求められたそうです。

三木 年金を受給する権利である受給権ですね。日本の公的年金の受給権は課税していないのに、外国の年金受給権は配偶者の余命年数までもらえるはずだ、として課税しています。ひどい間違いを犯しています。そのため外国で働いていた人たちは、日本に戻れなくなっています。

名越 適当すぎますね。本書にあった小樽市の公売の話も驚きました。

三木 ボロボロのビルで見積評価は2700万円ほどだからと落札したら、固定資産税の評価額がまさかの約3億3000万円だった件ですね。

名越 これはよくある事例なんですか。

三木 自治体の公売では、落札価格に比べて固定資産税の評価額が異常に高い場合が多いんです。小樽市の件もそうです。自治体がサボッて吹きさらしの建物でも、経年減価でしか評価していない実態が判明しました。24年10月には最高裁でも自治体のおかしな評価を違法と判断してくれました。

名越 自治体のいい加減な評価が是正されることになりそうですね。ところで、税金の裁判はどちらが勝つことが多いですか。

三木 国内で年間100件ほど裁判がありますけど、勝率は10%もいきません。税金裁判は負けを覚悟しながら臨んでいます。

ゲスト:三木義一(みき・よしかず)弁護士、青山学院大学名誉教授(元学長)。1950年東京都生まれ。中央大学法学部卒。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。94年立命館大学法学部教授、98年、ミュンスター財政裁判所客員裁判官、09年政府税制調査会専門家委員会委員に就任。10年青山学院大学法学部教授、15年青山学院大学学長に就任。19年青山学院大学学長を退任。20年山本法律会計事務所入所。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。

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