人間の場合、例えばきょうだいが3人ならば、長男、二男、三男にはそれぞれに役割のようなものがあり、生まれた順による性格のようなものが、なんとなく生まれる。兄は年長者として弟2人をまとめ、面倒をみる。二男は兄に従いながら、弟と喧嘩したり、時には面倒をみる。三男は末っ子でダダをこねたり、兄たちの言うことを聞いたりする。
ところが姉2人と長男のような場合、男三兄弟のようにはならない。長女が長男のような役割を担い、長男は末っ子になる。
人の性格は要するに、生まれた順に左右される、という理屈を書いた「相性が悪い!」という本がある。宗教学者の島田裕己氏によるものだ。これを勝手に「きょうだい占い」として、彼に有名人のきょうだいの相性を占ってもらったことがあるが、これが実に的確だった。
話は飛躍するが、これを猫のきょうだいの相性に当てはめてみたら…。そう考えて、我が家のガトー、クールボーイ、そうせきの3匹を見ていたら、猫にも応用できる気がしてきた。島田先生は長男、二男とはいわず、生まれ順なので第一子、真ん中っ子、末っ子という。4人の場合、真ん中っ子は2人だ。ひとりっ子もいるが、ここではきょうだいがいるケースを想定する。
その著書で最も合点がいったのは、2002年サッカー日韓共催W杯の、日本代表の生まれ順による分析だ。日本で初めて開催されたこの大会は、フランス人のトルシエが率いて「黄金のカルテット」といわれる4人のミッドフィルダーが活躍した。中田英寿は兄がいる末っ子(きょうだい2人なら二男は末っ子になる)、中村俊輔は兄が3人いる末っ子、稲本潤一は姉がいる末っ子、小野だけは5人きょうだいの真ん中っ子だった。
ではトルシエ監督はというと、6人兄弟の第一子だった。先の著書にはこうある。
〈(トルシエ監督の)強力なリーダーシップは、6人兄弟の第一子であることと深く関係しています。末っ子が多くを占める黄金のカルテットに対して、彼は第一子として仕切ることができたのです〉
これと真逆なのが、2006年ドイツW杯、ジーコ・ジャパンだった。ジーコは6人きょうだいの末っ子。今から考えても、まとまりのない日本代表だった。
ちなみにV9を達成した時の巨人は川上哲治監督だったが、川上監督は8人きょうだいの第一子。王貞治、長嶋茂雄、柴田勲は末っ子で、他のメンバーは真ん中っ子だったそうだ。
これを我が家の猫に当てはめてみる。猫の場合はきょうだいといっても血のつながりがないことが多いから「家にやってきた順」として考える(我が家の3匹は生まれ順も重なるが)。
まずは2021年に死んだジュテ、ガトー、クールボーイの3匹だった頃。この時はジュテが見事に弟たちをまとめていた。ガトーは従順に兄に従い、末っ子のクールボーイは時にガトーとジャレ合い、時にヤンチャしながら、ジュテに逆らう姿を見たことがなかった。写真にあるように、きちんと統率が取れていた。
さて、ジュテがいなくなり、そうせきがやってきたら、それまでの微妙なバランスがどうなるか、興味津々だった。結論はジュテの立場がガトー(今年9歳)にスライドし、ジュテがいた時と同じような関係に。第一子のガトー、真ん中っ子のクールボーイ(同6歳)、末っ子のそうせき(同3歳)のバランスが取れている。
当初、ガトーはジュテがいなくなってから寂しそうにしていたが、第一子の自覚が芽生えたのか、クールボーイに教育的指導をするようになった。例えば、首の後ろを噛んで絞める。そうせきが食ってかかってきた場合は、軽くあしらう。活発なそうせきでもガトーには一定の距離を置き、「おとなしくしろよ!」とたしなめれると黙る。
クールボーイとそうせきはどうか。そうせきはクールボーイと比べものにならないくらい好奇心が強く、その悪ぶりにクールボーイはヘコまされる時があるが、第一子に従いながら、真ん中っ子と末っ子がバチバチやっている感じだ。
島田理論の応用で、猫が我が家にやって来た順での相性を考えてみたが、ただし、ここに例えば15歳の老描が紛れ込んだら…。今はそれを確めようがない。
島田理論がそれでも猫に当てはまるならますます面白いのだが、はたして…。ただし、これはせいぜい4、5匹までの話。多頭数はまた別だろう。
(峯田淳/コラムニスト)