エンタメ
Posted on 2025年05月16日 17:58

「昭和」を売りにするテレビ業界が完全スルーした「気仙沼ちゃん」の「エモさ」

2025年05月16日 17:58

 テレビはもうやることがないのか、昭和ブームといいつつ、昔のVTRでお茶を濁す番組がいかに多いことか。64年間も続いた「昭和」の文化やエンターテインメントの、時に無軌道なほど享楽的だった側面ばかりをことさらに強調し、現在の「令和」と対比する構図。もう飽き飽きだ。

 私のような猜疑心の塊のような人間からすると「『昭和』がZ世代にウケている」と聞くたびに「本当か。オッサンたちが『そう言っとけば売れるだろ』と勝手に謳っているだけじゃないのか」と勘繰ってしまう。そもそも人気の理由を、なんでもかんでも「エモい」のひと言で済ませてしまうのも腹が立つというものだ。

 などということを言ってみたが、先日、ちょっと「エモい」体験をした。

 それは5月14日放送「世界くらべてみたら」(TBS系)の企画のひとつ「ソウルフード対決」でのこと。

「福岡vs愛知vs宮城!本当に地元の名物を食べてるのは?」をテーマに、それぞれの県の名物料理(菓子)を4つセレクトして「直近で食べたのはどれか」を、各県の街中でインタビューするものだった。宮城をレポートしたのは「耳がでっかくなっちゃった」のマジックで一世を風靡したマジシャンのマギー審司である。

 レポートの途中、マギー審司の出身地である気仙沼のとある旅館で女将さんにインタビューをしたのだが、登場した女将さんの顔になぜか見覚えがあったのだ。「THE漁港のおばあさん」といった雰囲気のプロトタイプ的なお顔だからそう感じただけかも、とも思いつつも「はて? この顔…」と記憶をたどって思い出した。「気仙沼ちゃん」だ!

 ところが番組側はそのことにいっさい触れないまま、進行していく。結局、マギー審司もスタジオの狩野英孝と大友康平(どちらも宮城出身)も気付いた様子はなく、モヤモヤを残したまま、コーナーは終了した。

 どうやら同じように思ったのは私だけでないようで、SNSに「あれは気仙沼ちゃんだ」「なぜ気付かない?」といった投稿を見かけた。

 おまけにマギー審司のインスタグラムには「僕ら世代なら知ってると思います」「気仙沼ちゃん」のコメントともに、ツーショットで微笑む写真がアップされている。やっぱり「気仙沼ちゃん」だったことがわかり…ということは、番組側があえて触れなかったのか、若いスタッフたちが知らなかったのかと推測される。

 もっとも、1977年から1978年にかけてという短い期間に「欽ちゃんのドンとやってみよう!」に出演し、その後は一般人として生活しておられるとのことだから、ご本人が当時のことを触れないように依頼したのかもしれないが…。

 いや、そもそも「気仙沼ちゃん」と言われたところでピクリともしない若年層(中年も怪しいかも)のために、わざわざVTRを別途用意する手間を、番組側が面倒に思ったのかもしれない。

 とはいえ、「昭和ブーム」を標榜するなら、昭和のテレビから生まれた人気者くらいは押さえておいてほしいものだ。

 実際のところはわからないが、あの頃と変わらぬ素朴な笑顔とお元気そうな姿を久しぶりに見られて、「エモい」気分になった。

(堀江南/テレビソムリエ)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月22日 20:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月17日 20:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月24日 20:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/6/24発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク