まさか、これほどのメンバーが入れ替わるとは思わなかった。
6月に行われる2026年サッカー北中米W杯アジア最終予選、オーストラリア戦(5日・豪州)、インドネシア戦(10日・大阪)に挑む日本代表メンバー27名が発表された。本大会出場を決めていることから、この月6のシリーズから新戦力の発掘と底上げを目標にしているとはいえ、初選出、復帰組が14人と、大幅に入れ替わった。
初選出の7人はどうなるかだが、森保一監督のこれまでの選手起用を見ると、ポジションを奪うどころか、試合に出場するのも難しいかもしれない。なぜなら27名のうち、試合に登録できるのは23名。つまり4名は、スタンドから試合を観戦することになる。そしてその4名のほとんどが、初選出の選手になる可能性が高い。
それでも期待したい選手はいる。パリ五輪代表だった平河悠(ブリストル・シティ)と、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)の2人だ。
平河は左サイドを主戦場とする快速アタッカー。町田ゼルビア時代、J2で一緒にプレーした元日本代表の太田宏介氏が「わかっていても止められない。異次元のスピード」と評価していたほど、攻守においてのスピードが魅力だ。
町田がJ1に昇格した昨季、攻撃の起点となったのが平河で、快進撃の原動力だった。彼が7月に海外移籍すると、町田の快進撃は止まった。平河の穴を埋めたのは、名古屋グランパスでプレーしていた相馬勇紀。相馬の加入でなんとかチームを立て直した。つまり、日本代表クラスでなければ埋められなかったということである。
森保監督はメンバー発表会見で、平河の初招集について、
「ケガや試合に出られない時もあったが、プレー内容は間違いなく良かった。ハードワークしながらゴールに向かうプレーは、イギリスで逞しさを増した」
と言っていただけに、試合出場の可能性は十分にあろう。
三戸は昨年12月から、チームで一気に頭角を現してきた。それまではベンチスタートで途中出場が多かったが、後半は完全にレギュラーポジションを奪った。164センチと小柄だが、自慢の敏捷性を生かし、貴重なアタッカーとして奮闘した。
彼の特徴は、コンパクトで振りが速いシュート。それでいて、強いシュートもミドルシュートも打てる。代表の攻撃陣は層が厚い。それでも競争で勝ち上がらなければ、代表には定着できない。今回、試合に出場できるかどうかはわからないが、短い時間でもインパクトのあるプレーを見せないと生き残れない。ただ、それだけのものは持っている選手だ。
もうひとり気になるのは、熊坂光希(柏レイソル)。7月のE-1東アジア選手権には呼ばれると思っていたが、まさかアジア予選で招集されるとは。それだけ森保監督が期待しているということだ。
185センチの大型ボランチでプレーエリアが広く、外国人選手相手にも当たり負けしないフィジカルの強さを持っている。今回のメンバーを見ても、本職のボランチは遠藤航(リバプール)、藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)、佐野海舟(マインツ)の3人しかいない。熊坂の出番があってもおかしくはないのだ。
アジア最終予選を戦ってきたメンバーを追い越してポジションを奪うのは、簡単なことではない。それでも新たなヒーローが現れることに期待したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。