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F1角田裕毅「完全な期待外れ」で露呈した「地獄のモナコGP」レースと呼べないルール

 コースのタイトさが織りなす、息詰まる空気感。歴史あるモンテカルロ市街地コースに、今年も多くのファンが熱い視線を注いだ。しかしF1第8戦モナコGP決勝は、レッドブル・角田裕毅にとっては悪夢のような一日となった。

 12番グリッドからスタートした角田は、17位フィニッシュの大惨敗。ファンが期待したドラマは影を潜め、むしろ「これをレースと呼べるのか」という疑念が広がった。

 今年のモナコGPは、ドライタイヤ最低2コンパウンド使用義務に加え、「決勝中に合計3セットのタイヤを必ず使う」という特例ルールが導入された。角田はその裏をかくべく、バーチャルセーフティカー中の1周目にピットインし、ピットロスを最小化する戦略を敢行。しかしピットアウト後は他チームの「ブロック作戦」や慢性的なトラフィックに翻弄され、トップから5秒差で走り続けながら、一度も抜きどころをつかめなかった。

 モナコ市街地コースは全長3.337km。縁石の多いタイトなレイアウトに、昨今の大型化したマシンではオーバーテイクポイントがほとんど存在しない。そのため予選順位がレース結果を左右すると言っても過言ではなく、実際に角田を含む多くのドライバーが70周以上にわたって「トラフィック地獄」に付き合わされた。

「こんなのレースじゃない」「ルールを根本から見直せ」といった嘆きがあふれる一方で、18台中17位完走の角田には「完全な期待外れ」「レッドブル昇格後、最悪の一戦」との厳しい評価が。当然ながら、クリスチャン・ホーナー代表は、

「彼はただ列の中を走っていただけだ」

 と手厳しく評した。角田自身も、

「何も起こらず、これまでで最も長く感じたレースだった」

 自らの予選パフォーマンス不足を痛感していると認めたのである。

 もし予選でQ3進出を果たしていれば、スタート直後の混戦を回避でき、タイヤ戦略に幅が生まれたはずだ。それが叶わなかった反省は、次戦スペインGPに向けた重要な教訓となるだろう。

 一方で、モナコGPが抱える構造的な問題も浮き彫りになった。市街地の狭さはドライバー同士の真剣勝負を封じ、レース本来の醍醐味を奪っている。もし観客が再び手に汗握る攻防を望むのであれば、タイヤセット数の見直しや、レース中に限ったエンジンハイパフォーマンスマッピングの一時解禁など、より大胆なルール改定が必要となるだろう。

 結局のところ、角田の1周目ピット作戦は「やらないよりはマシ」という賭けにすぎなかった。しかしそれ以前に、F1運営がモナコGPの根幹にメスを入れなければ、この伝統と格式あふれるレースは、ただの「市街地パレード」に成り下がってしまう。次戦カタルーニャ・サーキットで行われるスペインGPでは、真のバトルが展開されることを期待したい。

(ケン高田)

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