大相撲夏場所で優勝した大の里が第75代横綱に昇進し、日本列島が湧いた。横審では異論が出ずにわずか6分の審議、満場一致で推薦されたわけだが、日本出身横綱の誕生は、大の里の師匠である72代・稀勢の里以来、8年ぶり。石川県出身の横綱は第54代・輪島以来となる。初土俵から13場所での横綱昇進は、その輪島が持つ21場所を大きく更新する最速記録となった。
大の里は輪島について、
「まだまだ雲の上の存在。少しでも近づけるように頑張りたい」
と言うが、ケガさえなければ、輪島の優勝回数14を抜くのは時間の問題だろう。大関4場所の勝利数は9⇒10⇒12⇒14と徐々に増えており、場所を重ねるごとに強くなっている証左だ。
「豊昇龍とはちょっとレベルが違うかもしれません。このままでは『大豊時代』ではなく『大の里時代』になってしまうかも」(相撲ライター)
それでは、大の里のライバルとなりうる力士は誰なのか。豊昇龍は横綱昇進後、5勝5敗5休、12勝3敗で、平幕に負けるケースが多く、安定しない。一人大関の琴櫻は、勝ち越すのがやっとの状況だ。
昨年、新入幕で優勝という離れ業をやってのけた尊富士はケガで十両に陥落し、すぐに再入幕したものの、優勝時と比べると精彩を欠いている。今場所は二桁勝利した両関脇の大栄翔と霧島も、二桁勝利と9勝以下の場所が交互で、安定していない。小結で12勝した若隆景は、来場所以降もこの調子を保てれば大関に最も近そうだが、30歳という年齢を考えると、24歳の大の里のライバルとして長く立ちはだかる存在になるのは難しそうである。
「面白いのはウクライナ出身の安青錦。入幕後、2場所連続11勝で連続敢闘賞だった。来場所は平幕上位に上がってきますが、ここで通用するようなら面白いですね。もうひとり挙げるならば、十両で2場所連続優勝の草野。来場所の新入幕を確実にしています。大の里のライバルになるのはこの男かもしれません」(前出・相撲ライター)
日本大学相撲部出身の草野は元横綱・白鵬の宮城野部屋に入門予定だったが、不祥事で部屋が閉鎖されたため、その宮城野親方のいる伊勢ヶ濱部屋に入門。2023年度の学生横綱であり、幕下最下位格付出で昨年夏場所にデビュー。幕下通過には5場所かかったものの、十両に上がると覚醒した。
稀勢の里の弟子と白鵬の弟子が、大相撲の未来を担う両輪となるか。
(石見剣)