野球解説者の谷繁元信氏がRCCラジオ「Veryカープ!RCCカープナイター」で語ったのは、6月11日のZOZOマリンでのひと幕だった。
「心配なのは、坂倉のスローイング。セカンド送球時もジャッグルしているし、サード牽制時も少しジャッグルして暴投になって、1点を献上した」
同じ捕手として、広島・坂倉将吾の送球難に斬り込んだのだ。
2回裏、二塁への送球機会で、坂倉は捕球から送球体勢への切り替えが乱れ(いわゆる「ジャッグル」)、アウトを取り損ねる。7回裏の三塁牽制では、グラブさばきのズレから送球が三塁手の頭上を越え、三塁走者が生還。大瀬良大地の勝利機会を消す失点を招いた。
この失敗は、数字に鮮明に表れている。5月は打率3割9厘、OPSは0.803と打撃面で圧倒的な活躍を見せ、守備では82機会中1失策・守備率9割8分8厘をマーク。しかし6月は打率2割5分7厘で、OPSも0.708に落ち込むと同時に、33機会で1失策・守備率9割7分と不安定さが顔を覗かせた。
坂倉は春季キャンプ終盤の練習中に右手中指を骨折し、出遅れた。ウエスタン・リーグでの実戦復帰(4月22日)から1週間後の4月29日、巨人戦で1軍復帰を果たし、最初の2試合は無失策で、鋭いミットさばきを披露した。ところがケガ明けによる筋力不足なのか、キャッチングやスローイングはまだ万全ではなく、勝負どころで顕在化してしまった格好だ。
5月は低めの変化球を的確にリードし、打席では得点圏での決定打や犠牲フライを連発。「打ってよし、リードしてよし」の捕手像を再確認させた。だが6月に入ってからは、打撃こそ堅実ながら、送球精度の乱れがバッテリーの信頼度を揺るがせている。
カープは交流戦を上位で抜け、その勢いをペナントレースに持ち込んで、最低でもAクラスを確実にしたい。好投を続ける先発陣を支える捕手の働きは、勝敗を分ける重大要素だ。投手が「安心して投げられる」かどうかは、まさに捕手の送球とリードの精度にかかっている。谷繁氏の懸念は見過ごせない。
坂倉の負担を軽減するためには、石原貴規やベテラン會澤翼との併用起用も考えなくてはいけないだろう。これらは夏場の過酷な連戦を乗り切る上で、有力な選択肢となるはずだ。チームが首位争いを戦い抜くためには打撃のみならず、盤石な守備が不可欠である。
WBC日本代表の「扇の要」候補としても期待される坂倉。技術と体力を磨き直し、真夏の大一番で再び主役となる姿を見せられるか。
(ケン高田)