ドジャース・大谷翔平が、663日ぶりにマウンドに帰ってきた。しかも相手はダルビッシュ有と松井裕樹、そしてレジェンド・野茂英雄氏が球団アドバイザーとなっている、宿敵パドレス。役者が揃った復活劇は、記録づくめとなった。
6月16日 (現地時間)に先発マウンドに立った大谷は、先頭打者タティスに右前安打、続くアラエスへの初球暴投で無死二塁のピンチを招いたが、カウント1-2からの4球目はなんと、100.2マイル(約161.3キロ)をマーク。MLB公式サイトのサラ・ラングス記者によると、佐々木朗希の100.5マイル(約161.7キロ)に続く、今季の球団2位タイ記録(マイケル・コペックと大谷)だという。
打者5人に28球を投じて、2安打1失点。犠牲フライによる失点を帳消しにすべく、3回に自らのバットで同点とし、4打数2安打2打点1四球と勝利に貢献した。
二刀流ゆえ、投手として3Aで調整することはせず、指名打者として試合に出続けながらの、中5日での「実戦調整」が今後も続く。
大谷がサプライズ復帰した背景には、米海兵隊ら700人が鎮圧に動員された、ロス暴動の影響がある。一部が暴徒化しているデモは、日本人観光客が宿泊するホテルが集まるリトルトーキョー・エリアでも断続的に続いており、6月10日には同市の中心部ダウンタウン地区を対象に、午後8時から翌朝6時までの外出禁止令が出された。日本の外務省は注意喚起を出している。
大谷復帰戦の観客数は、スタジアムまで自家用車で移動できる地元ファンを中心に、5万3207人と5万人超えをキープしているが、日本人観光客への影響は必至だ。それをなんとかする必要がある。
ドジャース球団とMLBにとって「安定した収入源」となるのが、テレビ放映権料。MLBは大谷復帰戦の「MLB.TV」のストリーミング動画視聴者数が、史上最高記録を更新したと発表した。これまでの最高記録である、2024年の開幕戦アストロズ×ヤンキース戦を28%も上回ったという。
つまり、ロス暴動が悪化して、仮に無観客試合になっても、配信に伴う広告収入と放映権料で元は取れる。そんな構図で乗り切ることができれば…。
ド軍のロバーツ監督は大谷復帰戦での「先発・大谷、1番(打者)大谷」のコールに野球少年のように盛り上がっていたが、大谷のオープン調整のおかげで、放映権料は400億円超え。ドジャースタジアムの年間観客動員数は、史上初の400万人超えが確実となっている。
しかも、大谷が先発する試合のチケット代金と駐車料金は「時価」ときている。事実、入場チケット価格は急騰。米チケット販売専門プラットフォーム「チケットピック」によれば、売れ行きは3倍にハネ上がり、7400円のものが1万9400円に。別のチケット販売プラットフォーム「ビビッド・シーツ」では、平均価格が1万8700円から4万2600円に急上昇したという。
「球団史上、最も興行で成功した指揮官」として、ロバーツ監督の笑いは止まらないだろう。
(那須優子)