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Posted on 2026年01月11日 18:00

「プロレスVS格闘技」大戦争〈前田VSゴルドーからUWFブームが到来!〉

2026年01月11日 18:00

 元号が平成に変わる前年の1988年(昭和63年)、プロレス界は一足先に新時代に突入した。前田日明が旗揚げした新生UWFが社会現象と言ってもいいほどの大ブームになったのだ。

 前田は84年3月に新日本プロレスを飛び出して旧UWFの旗揚げに参加。旧UWFはプロレスのショー的な要素を排除した「打撃から投げて極める」という打・投・極を掲げて、従来のプロレスに飽き足らないファンを取り込んで信者を生んだが、85年11月に経営難から活動停止に追い込まれ、UWF選手団は86年1月から業務提携という形で新日本のリングに上がっていた。

 だが、87年11月19日の後楽園ホール大会で、前田の放った顔面キックで長州力が右前頭洞底骨折の大ケガを負うアクシデントが発生。前田は「プロレス道にもとる」という理由で出場停止処分になり、明けた88年3月1日には解雇が発表された。

 解雇された前田はUWF再興を決意して、5月12日に後楽園ホールで旗揚げ戦を敢行する。新日本に上がっていた2年の間にテレビ朝日の電波に乗ってUWFの存在、ファイトスタイルが全国に浸透し、UWFの再興を望む声が高まっていただけに1800枚の前売りチケットが15分で完売し、当日券を含めて超満員札止め2300人を動員する大人気。プロレスマスコミだけでなく一般マスコミも詰めかけて、報道陣の数も120人を越えた。

 8月13日には、旗揚げ3戦目にして有明コロシアムで初のビッグマッチを開催。1万2000枚の全指定席が前売り開始わずか6時間で完売、当日券なしという新たな伝説が生まれた。

 メインイベントは前田とオランダのジェラルド・ゴルドーの異種格闘技戦。

 ゴルドーはヨーロッパのマーシャルアーツとサバット(フレンチ・ボクシング)のスーパーヘビー級王者で、極真空手3段の“欧州重量級最強の男”という触れ込みだったが、日本ではまだ無名の格闘家だった。

 しかし、のちにアメリカでブームになった総合格闘技大会UFC(アルティメット・ファイティング)で勇名を馳せ、95年4月20日の日本武道館におけるUFCジャパン・オープンでは、サミングで中井祐樹の右目を失明させて「喧嘩屋」の異名を取ったデンジャラスな男。95年1・4東京ドームでは、アントニオ猪木のファイナル・カウントダウン格闘技トーナメント1回戦で猪木とも戦っている。

 それぞれに常時ファイトしているスタイルで戦うということで、ゴルドーは10オンスのグローブを着用。禁止技はサミング、急所打ち、チョーク、前田のヘッドバット、ゴルドーの肘打ち。制限は前田のグラウンド攻撃を30秒とするということのみで、現在の熟成された格闘技界からすると、ノールールと言ってもいい。

 1ラウンド3分の12ラウンド制で、勝敗はKO(1ラウンド中に何度ダウンしても試合をストップしないフリーノックダウン制)、ギブアップ、TKOのいずれかで判定決着はなし。12ラウンドで決着がつかない場合にはラウンドフリーで、勝負がつくまで続行するというルールが採用された。

 決戦3日前の高田とのスパーリングで顔面に膝蹴りを浴びて右目を腫らし、さらに慢性虫垂炎の悪化で体調不良の前田は、短期勝負とばかりに2ラウンドに膝蹴りをキャッチして強引にキャプチュードを決めたものの、不完全だったためにダメージを与えられず。

 3ラウンドにはパンチとキック、反則の肘打ちを織り交ぜたラッシュに大苦戦を強いられた。

 第4ラウンド、もはや前田にスタミナが残っていないと判断したゴルドーはハイキックの連発で勝負に出たが、その3発目を両腕でキャッチした前田は裏アキレス腱固めに取り、ゴルドーの右足に全体重を乗せて絞め上げて逆転勝ち。

 86年10月9日のVSドン・中矢・ニールセン戦以来の異種格闘技戦に勝利した、前田に浴びせられる1万2000人の熱いコールが有明の夜空に響き渡った。

 翌89年5月4日には大阪球場に進出して超満員2万3000人の前で85年ワールドゲームズ100㎏超級金メダル、同年の世界選手権100㎏超級金メダルの実績を持つ、オランダのサンボ王クリス・ドールマンを膝十字固めに極めて勝利。

 さらに同年11月29日には、遂に東京ドーム進出を果たした。旗揚げから18大会連続で超満員を記録していたが、この東京ドームのチケットも発売初日に4万枚が売れるという人気ぶりで、最終的に新日本の東京ドーム初進出(同年4月24日=5万3800人)を上回る6万人を動員し、全国9大都市でのクローズド・サーキットでも合計1万人を集めて、UWFブームが本物であることを証明した。

 その大舞台で前田は、83年世界柔道選手権大会銀メダル&85年大会銅メダルのウィリー・ウイリヘルムに膝十字固めで勝利。

「馬場さん、猪木さんのできない部分でプロレスの可能性を追求していく」とUWF再旗揚げの際に語っていた前田は、プロレスを格闘技として世間に知らしめることで馬場&猪木が支配する業界を変えたのである。

文・小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング」編集長として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)などがある。

写真・山内猛

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