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記事全文を読む→【世界の「最凶独裁者」列伝】「中央アジアの北朝鮮」トルクメニスタンの大統領が「コーランとオレの本以外は読むな」暴走指令
「中央アジアの北朝鮮」と称され、国土の85%が砂漠ながら資源大国である旧ソ連のトルクメニスタンに、かつて「生ける神」として君臨する独裁者がいた。初代大統領サパルムラト・ニヤゾフである。
自らを「テュルクメンバシュ(トルクメン人の長)」と呼ばせ、この国を私物化した男の統治は、もはや政治というより、誇大妄想の具現化であった。
ニヤゾフの歩みは、悲劇から始まる。1948年の大地震で家族を全て失い、ソ連の孤児院で育つと地道に出世を重ね、ゴルバチョフに見出されて権力の座に就いた。そしてこの男の本性が露わになったのは、1991年の独立。天然ガスの莫大な富を背景に、前代未聞の奇行に走り始めたのである。
とりわけ世界を呆れさせたのは、2001年以降に連発した謎の禁止令だった。「トルクメン人の文化にそぐわない」という独善的な理由でオペラ、バレエ、さらにはサーカスの上演を禁止。2004年には「地方の人間は本を読まない。聖典コーランと私の本があれば十分だ」と言い放ち、首都と大学以外の図書館を全て閉鎖してしまったのである。
「私の本があれば」とした豪語したその著書は「ルーフナーマ(魂の書)」。なんと国民はこの本を必読文献とされ、学校の成績から運転免許の取得、昇進に至るまで、この本の理解度が問われたというから開いた口が塞がらない。
そしてニヤゾフはこう豪語した。
「この本を三度読めば、天国へ行ける」
いやいや、もはや大統領というより、インチキな予言者である。
1月を自分、4月を母の名に変更した
エゴの暴走は、時間の概念さえも侵食した。2002年には1月を自らの称号である「テュルクメンバシュ」に、4月を最愛の母の名「グルバンソルタン・エジェ」に改称。果てはパンの名称までも、母の名に変更したのだった。
首都アシガバットには太陽の動きに合わせて24時間、回転し続ける自身の巨大な純金像を建立し、砂漠の真ん中で常に照らし続けさせたのである。
一方、この独裁者は水道・電気・ガスの無料化という「飴」で国民の口を封じ、永世中立という名の「鎖国」で外敵を遮断した。文字通り「王国」を築いたニヤゾフだったが2006年、心不全により突如として世を去る。享年66。
あまりの絶対性に、訃報を聞いた市民は「これは我々を試すための演技ではないか」と棺を見るまで信じなかったという。
トルクメニスタンの政策に対するゴルバチョフの意見や提案を「自分の国は自分で作る」と言い放ち、断固として受け入れなかったニヤゾフだが、トルクメン語をほとんど話せず、議会での答弁や演説以外ではロシア語を話していたというエピソードも。
独裁者が砂漠に描いたのは、富と狂気が混ざり合う、歪んだ黄金の夢だったのである。
(山川敦司)
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