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記事全文を読む→江上剛が選ぶ今週のイチ推し!〈日本半導体の“復活”をかけた「ラピダス」に勝算はあるのか〉
「半導体 尖端覇権の興亡」
大鹿靖明・著(講談社/2750円)
テレビやネットには「ニッポンすごい!」という称賛が溢れている。私には、それらは負け犬の遠吠えにしか聞こえない。「いい加減に目を覚ましたらどうか」と腹立たしく思う。我が国のGDP(国内総生産)はドイツに抜かれ世界4位、一人当たりのGDPも韓国、台湾に抜かれて世界の下位に沈む。
本書のテーマである「半導体」も、かつては世界シェアの50%以上を日本が占めていた。ところが今や見る影もない。家電業界も没落。東芝は解体され、シャープは台湾企業の手に落ちた。「ものづくり大国」などの称賛の声は、もはや過去のものになった。なぜ日本は、こんなみじめな姿になってしまったのか。
つまびらかにしているのが本書の第1部。ハイブリッド車に必要なネオジム磁石(永久磁石)は、政府が中国への技術流失を懸念していたにも関わらず、製造効率のみを追求するメーカーは中国に進出した。挙句、技術を盗まれ世界シェア80%を誇っていた我が国はシェアを失った。
日本の研究者が最初に実用化に成功した太陽電池も中国に市場を席巻され、日本メーカーは撤退に追い込まれた。半導体チップ製造の最先端技術のEUVも日本人が開発した。しかし、我が国の半導体メーカーの衰退とともにオランダ企業に凌駕されてしまった。技術開発を「やるんだ」という強烈な意思がなかったと悔やんでも後の祭りだった。「死屍累々」とでも評すべき、我が国の半導体関連企業の失敗は目を覆いたい。本書の様々な事例から敗因は、成功体験による傲慢さ、企業内外の人事を巡る対立、経営者のリスク回避姿勢であると私は読み取った。
第2部では「ラピダス」の「官民一体」の国家プロジェクトの詳細が書かれている。このプロジェクトの端緒は、憂国の士たちのリスクを負った決断に、国家が乗ったことを初めて知った。単なる官主導ではないのだ。「2ナノメートル」という先端半導体のニーズがあるのかと懸念もあるが、私はハーバード大学の経営学者・クリステンセンの「破壊的イノベーションが新しい市場を創る」という説に期待したい。
我が国は「AI・半導体」を日本の成長戦略の最優先課題に位置づけ「ラピダス」に2兆6000億円余りも投資した。著者は巨額の投資を「航空母艦が必要な時代に戦艦大和を建造するように見えなくもない」とあとがきに書いている。ジャーナリストが懸念を表明するのはしかたがない。
台湾TSMCやテスラなど敵機は雲霞のごとく攻めてくるが、戦艦大和を二度と海に沈めてはならない。「その方向性が正しかったかどうかは数年後には明らかになるだろう」とも著者は書いている。私も数年後を楽しみに待ちたい。
江上剛(えがみ・ごう)1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年、旧第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行し、人事部や広報部を経て、支店長などを歴任。02年に『非情銀行』で作家デビュー。10年、日本振興銀行の経営破綻に際して代表執行役社長として混乱の収拾にあたる。「翼、ふたたび」など著書多数。
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