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記事全文を読む→事故物件を原状回復 特殊清掃員が見た「変な部屋」(1)ゴミ屋敷が獣たちの「餌場」に
部屋中に死の痕跡が残る「事故物件」。そこには、遺族でさえ知らなかった故人の最期や科学では説明できない怪奇現象が見え隠れしている。特殊清掃のプロが目にした死のリアルとは——。
京都府内の閑静な住宅街に、「カアカア」というカラスの鳴き声がひっきりなしに響いていた。上空を旋回していた群れの数は少なく見積もっても20羽ほど。騒がしい方向に足を運ぶと、多くの戸建てが並ぶ一画に一軒だけ異様な光景が‥‥。ガレージから軒先にかけてゴミ袋があふれ出ており、屋根にはびっしりとカラスが止まっていたのだ─。
「まるで魔界のようでした」
こう振り返るのは、書籍「特殊清掃員が見た怖い部屋」(Gakken)の著者である「関西クリーンサービス」の亀澤範行代表取締役だ(以下指定のない「」は亀澤氏)。殺人、孤独死、自死などが発生した「事故物件」には、遺体から流出した体液や排泄物が床や畳に沁み込み、それらが死臭となって部屋中に充満してしまうもの。原状回復するためには、専門的な薬剤や機材を用いた特殊清掃が必要になるのだ。
亀澤氏は特殊清掃に従事するスタッフの1人でもある。人の死と隣り合わせの仕事だけに、背筋が凍りつくような場面にしばしば遭遇するという。冒頭の一軒家は家主が孤独死した現場だ。
「この家の住民は70代の男性。妻に先立たれて長い間1人暮らしをされていました。3階建てで、1階のガレージから2、3階の住居までゴミがあふれ、各フロアの天井まで届いていました。男性は、玄関から入ってすぐの場所で立ったまま亡くなっていたそうです。玄関から入った奥がゴミで一歩も動けない状況だけに、男性は亡くなった場所で立ったまま生活していたと思われます」
大半のゴミ屋敷は人間1人が寝られる隙間が辛うじて残っているだけで、台所やトイレもゴミであふれ返り、使用できないことも‥‥。実は、遺体が立った状態で発見されることは珍しくない。おそらく、雪崩のようにゴミに押し潰されて死に至るのだろう。
「この住宅が少し特殊だったのは、野良猫、ハクビシン、イタチ、ネズミなどあらゆる種類の動物が徘徊していたことでしょう。ゴミ屋敷に動物が出入りするのは、特殊清掃の現場においては日常的ですが、あまりにも種類が多くて‥‥」
死後1カ月の間にゴミ屋敷は獣たちの「餌場」と化したようで、
「腐敗臭や死肉に引き寄せられてゴキブリなどの虫やネズミが集まり、それらを追って野良猫や鳥が現れ、その捕食者のイタチやハクビシンの棲家になりました。ちなみに、別の現場ではタヌキが現れることもありました。今回のご遺体の上半身が損傷していたのは動物のせいです。肉や皮膚をかじられて、頭部は骨が見えていたそうです」
4日間で延べ40人のスタッフを動員。天井までゴミが積み上がっていただけに、撤去作業は困難を極めた。
「最初はロッククライミングさながらに這い上がるように作業せざるをえない状況でした。何度も猫やイタチなどの動物に遭遇して、時にはビックリして腰を抜かしそうになったことも。一方で、体液処理などの特殊清掃は不要でした。ご遺体の体液や排泄物がゴミに吸収され、床まで浸透していなかったんです」
ゴミの山が埋めていたのは、独居老人の孤独感だけではなかったのだ。
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