スポーツ
Posted on 2015年04月18日 17:56

広島・黒田博樹「不屈の野球道」(4)常に進化を遂げる黒田の投球術

2015年04月18日 17:56

20150416ee

 初めて2桁勝利を達成したのはプロ入り5年目、01年のことだった。

「来年、期待しているからな」

 プロ入り後、伸び悩む黒田を覚醒させる転機は前年の秋季キャンプで、01年からチームの指揮を執った山本浩二監督からのそんなひと言だったという。

 西山氏も当時の黒田の変化を認める。

「入団当初から、こっちが気を抜くと捕れないっていうほどの速さはあったよ。でも、150キロのまっすぐを待っている打者に、スライダーやフォークを痛打されることもあった。緩急を使えていなかったからだけど、ここから黒田は違ったね。カーブを覚え、さらにシュートの習得にも取り組んだり、新しい球種をマスターしていった。あれだけのストレートがあったら、それに過信するピッチャーもいるけど、黒田は黙々と練習していたからね」

 05年、チームは最下位に終わったが、黒田はキャリアハイの15勝をあげ、最多勝、さらにゴールデングラブ賞、ベストナインにも選出された。06年も13勝をあげ、さらに1.85という驚異的な防御率を記録する。

 今岡氏が当時の印象を語る。

「プロに入ってワンランク、ツーランク上のレベルに到達したピッチャーだと思う。黒田の球はズドンとくる剛球で、外国人のような球質だった。本人は真ん中を目がけて投げているのかもしれないけど、打者からするとアウトコースにちょっとスライドしたり、インコースにシュートしたり。日本人は回転がきれいなキレのある球を投げるんだけど、黒田はその反対。非常にやっかいでした」

 ピンチになればなるほど一番の武器である150キロを超えるまっすぐで勝負し、気迫に満ちた投球でセ・リーグの強打者たちをねじ伏せてきた。

 そして日本球界を代表するエースへと成長した黒田は、07年にFA権を行使してメジャー移籍を表明。その後、ドジャース、ヤンキースで7年間もの間、主力として投げ続け、5年連続で2桁勝利をあげた。そして、今年、広島への復帰を決断したのだ。

 黒田はインタビューの中で、メジャーで投げ続けられた理由を聞かれて、次のように答えている。

「ピッチングに対する発想を日本の時と切り替えられたこと。メジャーに来た時から、力でねじ伏せる投球スタイルを貫くことは難しいと思っていました」

 薮田氏が語る。

「黒田の強みは柔軟性です。日本にいる時はまっすぐでどんどん押していくパワーピッチャーのイメージだったが、メジャーに行ってからはツーシームを覚えるなど、投球スタイルが大きく変わりましたよね。プレートの踏み方も日本時代は三塁側のいちばん端を踏んでいたけど、メジャーの途中からは真反対になった」

 黒田は常に進化を遂げてきた。40歳になる今日まで、そして今もなお、なぜ現状に満足することなく不屈の精神で変化し続けることができるのか。

 西山氏は言う。

「黒田はアマチュア時代にほとんどスポットライトを浴びることがなかった。類いまれな身体能力やセンスがあったわけでもない。そうした劣等感が原動力になったと思うよ」

 そう、黒田はプロ入り前からいくつもの壁を乗り越えてきた。

 では、かつて味わい続けた挫折と苦悩の日々とはどんなものだったのか──。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
特集
2025年05月18日 05:55

気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

記事全文を読む→
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/7/15発売
    ■530円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク