エンタメ

爆笑必至“認知症ドキュメント映画「徘徊 ママリン87歳の夏」”初公開の真意

20151008u

〈家出回数:1388回 徘徊時間:1730時間 徘徊距離:1844km お世話になった交番・警察署:31カ所〉

 認知症を患った87歳の母親と、介護する娘の日常に密着した映画「徘徊 ママリン87歳の夏」(オリオフィルムズ)。この作品の最後に登場するテロップがこれである。

 16年前に夫が他界したあと、奈良で1人暮らしをしていた酒井アサヨさん。8年前に認知症と診断されたあとは、娘の酒井章子さんが週に数度見舞っていたものの症状が進行し、6年前から大阪市で同居生活を始めた。

 章子さんは当初、安全を考え「ママリン」を外に出さないようにしていたが、玄関のドアを叩き「外に出たい」とわめき続けるため「認知症を悪化させないためには、家に無理やり閉じ込めておかず、ありのままに、自由にさせておく形もあるのではないか」と考え、玄関のドアを開放したという。

 そしてママリンの徘徊生活がスタートする。本作は、その徘徊の様子を淡々と記録したもので、

「恐らく『徘徊ドキュメンタリー』の形をとった映画は日本初ではないかと思います。このおばあちゃんは芝居をしているのではないか、と思う人もいるでしょうが、まったく芝居ではありません。とにかく笑える内容で、『吉本の漫才よりオモロイ』が売りですね。といっても認知症の老人をただおもしろおかしく撮っているわけではなく、あえて人に見せる『お披露目型介護』もいいのではないか、と考えたもの。徘徊というとどうしても暗いイメージが付きまといますが、そうではないケースもあるということを知ってもらいたいのです」(この映画の関係者)

 ママリンと章子さんによる「とにかくオモロイ掛け合い」は序盤から炸裂。自宅でくつろいでいると、

「ここ誰の家? 刑務所?」

「ちゃうちゃうちゃう。ここはアッコちゃんのおうちや。刑務所ちゃうよ」

「ホント~!?」

「刑務所はこんなユルユルな状況ちゃうよ」

 食事をする場面では、そうめんのつゆを飲もうとして制止されたかと思えば、

「あんた誰?」

「アッコちゃんや」

「アッコ?」

 ママリンは首をひねり、不思議そうな顔だ。

「おかしいな~。なんや大きなりすぎたような」

「そらそうや。オバハンになってんもん」

「ホンマ?」

「自分が87歳やろ」

「ええ!? ホンマ~!?」

 飼っている猫がすぐ目の前にいるのに、猫のぬいぐるみをなでて話しかける。

「アッコねえちゃんに大事にしてもらってるんだね。よかったねー」

 この行動を章子さんは「生きてるか生きてないかわかってない」と分析する。

 ママリンが外を徘徊する際、章子さんはママリンの姿を監視しながら尾行し、時々「バッタリ出会った」状態を装って声をかける。

「あれ? ママリン、何してんの?」

「お金盗られたからね、お巡りさんに言おうと思ってた」

「ナンボ盗られたの?」

「6000円」

「オモロイ金額やね」

 もちろん、マリリンはお金など持って出ていない。

 うっかり遠くまで徘徊し、帰る道がわからなくなって座り込むシーンでは、

「今日、どこへ泊まんの? あんたどこか知ったとこあった? あ、公園があったな。そこ行こうか。ん? アッコ姉ちゃん、返事しいや。ボーッと立っとかんと」

 とそばの電柱に話しかけ、ピタピタと手で叩く。

 また、ある日はレストランでおしぼりにかぶりついたりも──。

 前出・映画関係者は言う。

「おもしろいのは、章子さんが『ママリンが遠くに行くと、(連れて帰る際の)タクシー代が大変だから、近くを回りましょう』と言うと、ちゃんと近くを徘徊するようになったこと」

 徘徊の概念を覆すこの作品に、理想の介護とは何かを考えさせられる教訓が含まれている。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
【戦慄秘話】「山一抗争」をめぐる記事で梅宮辰夫が激怒説教「こんなの、殺されちゃうよ!」
2
神宮球場「価格変動制チケット」が試合中に500円で叩き売り!1万2000円で事前購入した人の心中は…
3
永野芽郁の二股不倫スキャンダルが「キャスター」に及ぼす「大幅書き換え」の緊急対策
4
巨人で埋もれる「3軍落ち」浅野翔吾と阿部監督と合わない秋広優人の先行き
5
「島田紳助の登場」が確定的に!7月開始「ダウンタウンチャンネル」の中身