――関西電力は安全対策の工程表を提出しました。
その安全対策を見ていると「アレ、今すぐやったほうがいいんじゃないの」という重要なことが先延ばしになっている。福島で事故があった時に原子炉の圧力を逃がしましたが、そのベントのところにフィルターを取り付けるのが2.3年先になっているんですね。
――それは、どんなものでしょう?
つまりね、破局的な大事故を防ぐため、やむをえない方策として原子炉の圧力を抜かなければいけない場合があります。この時、大量の放射性物質が外に出るからフィルターでそれを遮るというものです。欧米の原発には付いているんですが、日本では「事故は起きない」とされて、以前はベントする穴さえなかった。ベント穴を作っても事故は起きないわけだから、フィルターなんか必要はないという理屈だったんです。
それがとりあえず非常用電源をいくつか付けたり、津波対策や地震対策ができたから安全ですよということになっていますが、肝心のベントのフィルターの取り付けは運転中にはできないんですよ。とりあえず動かして13カ月に一度、安全点検しますから、その後、おいおいやっていくと言ってるわけです。それじゃ、原発を止めている今やりなさいよと言いたいですよね。
―― 一方で電力料金の値上げが始まっています。
そうですね。原発を再稼働しないと火力発電に頼ることになり、そのためには重油や石炭や天然ガスを輸入するわけですから、当然コストはものすごい跳ね上がるわけですよ。そりゃもちろん、電力会社もいろんな経費削減はするべきだというのはそのとおりなんですが、消費者も「再稼働はイヤだ、電力料金の値上げはイヤだ」と、そんなダダっ子みたいなことばかりは言えません。
――やはりそうですか。
点検で発電が止まっている間でも、燃料棒からの崩壊熱は冷やし続けなければならないわけですから、コストはかかるんです。
――原子力安全委員会の班目春樹委員長が、再稼働のGOサインを出したわけですが、そもそも福島の大事故の責任者がOKを出すのは釈然としません。
ハッハッハ、そう来ましたね。ただね、もちろん私だって原発はないほうがいいに決まってると思いますが、例えば関西などの製造業が夏場操業を休んでくれということになったら、海外に逃げ出そうという話になりますでしょ。そうするとエネルギーの問題は中長期的に考えないといけませんよね。少なくとも以前のように全原発を再稼働ということは非現実的ですが、全てダメというのも非現実的なところがあります。
さっきの「ベントフィルターも付けずに再稼働」なんてのはムチャがありますが、十分な安全対策をやったうえでの慎重な再稼働、そして何基動かせば電力は賄えるのかということなどを冷静に考えていかなきゃいけない。福島みたいに40年も動かしている古い原子炉はもう絶対動かさない。新しい炉については、動かすか動かさないか、きわめて合理的に考えないといけないんですよ。
――なるほど、それなら納得できます。
日本は世界第3位の地熱エネルギー国なんですが、福島では大規模な地熱発電開発の議論が始まりました。でも、さっそくあちこちの温泉街から「お湯が枯渇する」と反対の声が上がっています。日本という国は本当に何か始めようとすると反対運動が起きるんですよね。
――次号では、気になる増税の問題をうかがいます。
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