エンタメ

森高千里「私がオバサンになっても」(前編)(2)椎名林檎と対照的なキャラ

 そんな映画の極寒ロケに先立つこと数カ月前、鳴り物入りで芸能界入りを果たした森高は、主演作の主題歌を歌うことも決まっていた。そこであらかじめ、地元九州でボイストレーニングを積んでいた。

 指導に当たったのがヤマハ音楽振興会でボイストレーニングを指導する波多江顕亮だった。

「当時の森高は透明感があって、何より高校生なのに彼女の周りだけ光っているようなめちゃめちゃかわいい娘でしたね。何しろ彼女がレッスン室に入ってくるだけで、その場が爽やかになるような雰囲気の娘でしたよ」

 幼い頃からオルガン、ピアノ、そして高校ではドラムスのレッスンを受けていた森高だが、シンガーとしてはズブの素人だった。それだけに森高のボイスレッスンは発音、発声、息の使い方など基本から始めることが必要だったという。レッスンは短い期間だったが、波多江の教室のある博多、そして場合によっては、森高の実家のある熊本でも行ったという。

「いつも決まって高校の制服姿でレッスンを受けに来ていました。彼女は腰の位置が高いほっそりした体躯だったので、陸上選手のような印象を持ちましたね。狭いスタジオの中で指導したのに小さい彼女はまったく邪魔にならないんです。

 彼女は息の使い方は上手でしたが、特徴として鼻声というか、音が鼻から抜ける通鼻音が強かったんです。ですから、彼女の場合は特に口の中で音を増幅させる口腔共鳴を増やすような練習をしました」

 通常、通鼻音が強い人はノドが弱いのだという。波多江は、その後、福岡出身で昨年の「カーネーション」のヒットが記憶に新しい椎名林檎のボイストレーニングにも当たったが、2人はまるで対照的だったという。

「椎名を教えたのも同じく高校生の時でした。夜遊びして、哲学的な変な詩を書いている椎名はアーティストの雰囲気を持っていました。一方、森高はというと、椎名より呼気圧が弱い。つまり鼻から音が抜けるだけにブレスが弱く、とても365日毎日歌い続けられるだけの強いノドを持っていなかった。それでも僕が見た中で間違いなく一番の美人でしたから、これは女優さんのほうが向いていると思った。

 普通はトレーニングで指示すると『ハイ、できます。歌うのが大好きなんで頑張ります』とか返事だけはいい子が多いんだけど、彼女は決して大きなことは言わない娘でしたね。何より、およそ『売れたい』というギラギラしたところがなかった。それなのに何とか頑張って教えてあげたいという気にさせるいい子でしたね」

 デビューするしないにかかわらず、アーティスト志向や上昇志向の強い生徒はギラギラした面を持っているが、こと森高については、生き馬の目を抜く芸能界で生き残っていくようなタイプには見えなかったという。だが、それでも当時から、椎名とは違うアーティスティックな片鱗を見せていた。

「彼女は物静かな感じでもいつも目力があった。黙っていると怒っているの?

 と聞いてしまうような顔だった。当時から詩を書くのが好きだと言っていて、中身は見なかったがノートにはたくさん詩が書かれていた。でも、女優には向いていると思ったが、まさかアーティストになるとは思わなかった」

 それでも、プロのトレーニングを受け、短期間でレコーディングに耐えられるまでに歌手・森高は上達した。最初のシングル「NEW SEASON」を聴いた時、波多江は驚いた。

「デビューして間もない頃の山口百恵のような、嫌みのない歌声になっていた」

 それが、のちのアーティスト・森高千里の魅力として認知されていくのである。

カテゴリー: エンタメ   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    塩試合を打ち砕いた!大谷の〝打った瞬間〟スーパー3ランにMLBオールスターが感謝

    日本時間の7月17日、MLBオールスター「ア・リーグ×ナ・リーグ」(グローブライフフィールド)は淡々と試合が進んでいた。NHK総合での生中継、その解説者で元MLBプレーヤーの長谷川滋利氏が「みんな早打ちですね」と、少しガッカリしているかのよ…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , , |

    新井貴浩監督が絶賛!劇画のような広島カープ野球の応援歌は「走れリュウタロー」

    プロ野球12球団にはそれぞれ、ファンに親しまれるチームカラーがある。今季の広島カープのチームカラーを象徴するシーンが7月初旬、立て続けに2つあった。まずは7月4日の阪神戦だ。3-3で迎えた8回裏、カープの攻撃。この試合前までカープは3連敗で…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , , |

注目キーワード

人気記事

1
岡田監督よく言った!合計43得点のオールスター戦が「史上最もつまらなかった」とファンが怒った当然の理由
2
巨人・阿部慎之助監督のエンドラン外し「捕手の勘だった」発言に江川卓が「それはない」異論のワケ
3
認知症の蛭子能収「太川陽介とバス旅」は忘れてもボートレース場で「選手解説」ギャンブラー魂
4
レジェンドOBなのになぜ!ド低迷の川崎フロンターレ「中村憲剛」新監督案をサポーターが拒絶
5
【衝撃事実】見たのは誰だ!トランプ銃撃犯は「11分間ドローンでライブ配信」していた