芸能

「やすらぎの郷」で蘇る「国策映画」に反戦メッセージを込めた監督たち

 専門家から高く評価されている放映中の倉本聰氏作の帯ドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)。藤竜也演じる「高井秀次」のモデルが高倉健であるとともに笠智衆であるように、同ドラマは倉本氏が知る人物やエピソードをモデルにして脚本が執筆されているようである。

 そんな同ドラマの8月第1週で語られたのは「戦争」だ。志半ばで戦死した映画監督や戦意高揚のために製作された国策映画を絡めたストーリーで、もちろんフィクションだが、「国策映画」がどんなものか、また、心ならずも戦意高揚への協力を余儀なくされた当時の映画関係者が映画製作とどう向き合ってきたか当時の状況が丁寧に描かれている。

 実際に戦時中、国策映画を撮らされ、戦死した監督には山中貞雄監督らがいた。一方で国策映画と見せかけ、反戦への想いを込めて映画を撮った監督もいたという。映画ライターに聞いた。

「有名なところでは黒澤明監督の『一番美しく』があります。戦闘機の部品を作る女子挺身隊の話ですが、その作業はとてもハード。眠らずに働き、親の死に目にも会えない。そんな作業を続ける少女の姿は立派なようで実は異様なもの。この戦争は間違っていると観る側は思ったでしょう。また、少女たちが行進の時に演奏する曲は敵国アメリカの作曲家・スーザのマーチですから、黒澤監督は大胆なことをしたものです」

 木下惠介監督の「陸軍」も有名だ。田中絹代演じる母親が転び、よろめきながら出征する息子を延々と追いかける長回しのカットは圧巻で、戦争に送り出したくない母親の気持ちが痛いほど伝わってくる。これで戦意が高揚するわけがない。

 国策映画を撮りたくなかった監督たちの気持ち。日本を愛しながらも映画や文化を愛した若い命が散り、残された人たちにどのような傷が残ったのか。そんな現実に思いを致しながら視聴すれば、このドラマがより胸に沁み入るはずだ。

(笠松和美)

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
「京都崩壊」の信じがたい現実…外国人観光客専用都市に激変した「不気味な風景」
2
商品価値が落ちたヤクルト・村上宗隆「メジャー計画変更」で大谷翔平と同じ道を
3
土壌ラドン濃度・衛星観測・上空発光…火山噴火と大地震「前兆キャッチ」の新技術がスゴイ!
4
山尾志桜里の「公認取り消し」騒動を起こした玉木雄一郎は「榛葉幹事長人気に焦った」って!?
5
フジテレビ・山本賢太アナが行方不明に!? 「代役」登場と「謎のテロップ」