政治

鈴木哲夫の政界インサイド「二階幹事長が党内政局で見せる“変幻自在”手腕」

「遺書とともに森友関係の書類が置かれていた。自ら命を絶った原因は、はっきりしている。遺族の怒りも相当で、財務省の対応が急転したのはそのため。つまり、もう隠せないということだ」

 警察庁幹部から事情を聞いた自民党ベテラン議員がこう漏らしたのは、3月9日夜のことだった。午前に近畿財務局職員の自ら命を絶ったことが発覚。この職員は森友学園との交渉を担当していた。同日中に、財務省理財局長として国会答弁に立ってきた佐川宣寿国税庁長官が突然の辞職表明。そして3日後には、隠せなくなった財務省が決裁文書の改ざんをついに認めたのだ。

 森友問題とは、学園への国有地売却時の8億円もの値引きが、不当な取引と問題視されたもの。学園は安倍首相や昭恵夫人と関係があったことから、忖度が働いたのではと、国会では野党が追及。安倍首相や財務省は一切を否定してきた。

 ところが前述のように、朝日新聞が報じた国有地売却の決裁文書の改ざんを認めたのだ。原本から削除された部分には昭恵夫人の名前もあり、森友問題の本質部分も疑惑が強まった。

 それでも麻生財務相は「(改ざんは)理財局の一部の職員が行った」「私の進退については考えていない」と、安倍首相とこの問題を切り離そうと躍起になっている。政権への打撃を避けようとしているのだが、野党は勢いづいている。

「なぜ書き換えたのか説明になっていない。佐川氏も辞めれば済むという姿勢でまともに説明していない。証人喚問は当たり前、麻生氏の辞職も当然だ。それが実現するまで国会は止まる」(野党国対幹部)

 しかし、安倍首相にとって野党の追及以上に、恐れているのは党内政局。自民党選対幹部が話す。

「ちょうど来年の統一地方選へ向けて全国の地方組織がポスターを貼り始めたが、党内では安倍首相のままでいいのかという空気が流れている。来年は参院選もあるわけで‥‥」

 ガゼン、9月の総裁選の潮目も変わってきたという。安倍首相3選が有力視されてきたのだが、そこに立ちはだかるのは石破茂氏。昨年、内閣の支持・不支持が逆転した際、世論調査で首相にふさわしい人としてトップになった。早くも石破氏への期待も高まっている。

 そして、総裁候補として名前があがりながらも、慎重な姿勢を崩さなかった岸田文雄政調会長も‥‥。

「支持率が下がるようなことになれば、安倍首相からの禅譲を待っているわけにもいかない。ましてや、やすやすと石破氏へ、となるのは避けたい。岸田氏は立つしかない」(岸田派議員)

 総裁選へとうごめき出した自民党。だが、政局の主導権を握ると見られるのは二階俊博幹事長だ。すでに変幻自在の手腕を発揮しているという。

「二階氏は、もともと官邸の力が強く、党が下請けのようになっていることがおもしろくなかった。裁量労働制でのデータ捏造でも官邸に説明責任を求めたが、今回も『重大なことだ』と公然と政府批判を展開している。安倍首相にとって3選に二階氏の協力は不可欠。このところの発言を見ていると、二階氏は『協力してほしければ言うことを聞け』と党主導の体制を作るいいチャンスが来たと思っているのではないか」(前出・自民党ベテラン議員)

 今回は行政の信頼を根底から失墜させる大問題。本来なら「霞が関改革」が叫ばれてもいいところなのだが、自民党は政局へと向かっている。

 安倍一強を突き崩す「自民党改革」が、最優先ということなのだろうか。

ジャーナリスト・鈴木哲夫(すずき・てつお):58年、福岡県生まれ。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリーに。新著「戦争を知っている最後の政治家中曽根康弘の言葉」(ブックマン社)が絶賛発売中。

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