社会

「老境おひとり様生活」の過酷な現実(1)自分の服のサイズも知らない

 平均寿命のデータや世間の実情などから、「男が先に死ぬもの」と勝手に思い込む夫は実に多い。しかし、現実は思いどおりにはいかない。思いがけず妻に先立たれ、ある日突然、「おひとり様生活」を強いられることになったら‥‥。そこには想像だにしない、コワ~イ現実が立ちはだかるのだった。

 働き盛りも過ぎて、そろそろ人生のセカンドステージを考え始める50代から60代。子供たちも手がかからなくなり、夫婦ふたりの暮らしは物足りないようでいても、おおむね穏やか。そんな順風満帆な生活がある日突然、一変したら‥‥。

「女性はふだんの生活を細かく把握していますし、順応性が高いので、もし夫が死んだとしても、その後の生活にはあまり困りません。しかし、世の中の夫のほとんどは、自分は絶対に妻より先に死ぬと思い込んでいて、自分が残されるという概念がない。なので、いざひとりになると何もできず、今までいかに嫁の力で生きてきたのかということを知ってアゼンとするんです」

 こう断じるのは、パートナーに先立たれた既婚男女を調査しながら、その後の生き方に役立つ心得を記した「没イチ」(新潮社)の著者で、第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどり氏である。小谷氏はパートナーに先立たれた人を「没イチ」と呼び、立教セカンドステージ大学の講師として、受講生とともに「没イチ会」を立ち上げている。小谷氏自身、7年前に夫が突然死してしまったという没イチキャリアで、会員は40代から70代までの没イチ男女。「死んだ配偶者の分も2倍人生を楽しむ使命を帯びた人の会」というテーマで活動中である。

 没イチとなった場合、まず男女の状況の大きな差が浮き彫りになるという。小谷氏が行った調査では、没イチのシニア男性の6割以上が、再婚を含む特定のパートナーを欲しがっている、との結果が明らかになった。

「没イチ男性で再婚を望む人は多いですね。でも聞いてみると、それは伴侶というより、自分の面倒を見てもらえる相手としての存在で、無料の家政婦のようなものなんです。逆にシニア女性側は、旅行や食事などをする特定のパートナーを望む人は2割ほど。一緒に暮らしたいという人は1割しかいません。没イチ会メンバーでも70代でずっとお見合いをしている人がいますが、やはりハードルは高い。その点を踏まえ、あらかじめ自分がひとりになる前に、いろんな準備をしておくことをお勧めします」

 妻を失ってから困ることは多々あるが、小谷氏が指摘するのはまず、生活的自立ができるかどうか。料理、洗濯、掃除など日常の行為を妻任せにしていた男性は、未知の世界に放り込まれたように、何もできなくなるのだ。

「靴下のありかはもちろん、自分の服のサイズも知らない。電子レンジの設定のしかたもわからない。洗濯物を畳むのが面倒くさくなって、そのうち洗濯もしなくなる。お風呂にも入らなくなり、同じシャツやパンツを1週間も着続ける。外に出てホームレスみたいなニオイがするなと思ったら、毛玉だらけの汚れたセーター姿の没イチ男性だった、なんてことも多いですね」

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