政治
Posted on 2020年03月19日 09:55

歴代総理の胆力「大平正芳」(2)「オオダイラ君であります」

2020年03月19日 09:55

 大平は初出馬では田舎のジイサン、バアサンにクソ面白くもない財政問題を懸命にしゃべったが、いかにもカタい話すぎて聴衆はシラケるのが常だった。「笑顔だけはステキ」と妙に婦人票が集まって、からくも当選を果たしたのだった。しかし、2回目の選挙では笑顔だけではピンチと見かねた後援会幹部が、親分である池田に直訴、応援に吉田総理を引っ張り出すことに成功した。だが、これがウラ目に出、初出馬以上の苦戦だったがなんとか当選となった。大平後援会幹部の一人が、のちにこう述懐したものだった。

「2回目の選挙はヒドかった。“吉田ワンマン”が観音寺(かんおんじ)の演説会場に応援に入ってくれたのは有難かったが、演壇の傍らにいる大平を指して『私の最も信頼するオオダイラ君であります』とやった。聴衆は『名前も間違えられるくらいだから、大した男じゃないようだ』と受け止める者も少なくなく、こういうハナシが広まってむしろ苦戦となった。大平自身もさすがにショックだったらしく、『オレはこの選挙で落ちたら、政治家は辞めるつもりだ。どうもオレは勝負事には向かんようだなぁ』と、弱気丸出しだった」

 しかし、「親分」の池田勇人が総理のイスにすわると、当選4回で第1次池田内閣の官房長官に就任、池田の大平に対する信任は、一層強いものになっていた。

 時に、一方で大平は、田中角栄と親交を結んでいた。年齢は大平が8歳年上だが、議員としては田中が先輩で、肝胆相照らす間柄になっていた。

 その背景には、田中が5歳の一人息子を病気で失い、大平もまた26歳の長男を難病で亡くしたという“共通項”があった。互いの胸の痛みが、よくわかるということだった。そのうえで、まだクーラーもない当時の木造の議員会館で二人の部屋が隣り同士、よくステテコ姿で互いの部屋に入り込んでは政策論を戦わすなど、紐帯感を育んでいたのである。

 やがて、二人は「盟友」関係となる。互いを補完しつつ天下を取ることになるのだが、権力抗争には手練れの田中が、終始、大平に知恵を与え、尻を叩いていた形跡が残っている。

■大平正芳の略歴

明治43(1910)年3月12日、香川県生まれ。東京商科大学(のちの一橋大学)卒業後、大蔵省入省。昭和27(1952)年10月、衆議院議員初当選。昭和53(1978)年12月、大平内閣組織。総理就任時68歳。昭和55(1980)年6月12日、衆参同日選挙のさなかに急性心不全で死去。享年70。

総理大臣歴:第68・69代 1978年12月7日~1980年6月12日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    事件
    2026年09月16日 20:30

    「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」は、広島カープに大きな衝撃を与えた忌まわしいブツだ。元広島カープの羽月隆太郎氏にこれを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた会社役員・滝口涼介被告の初公判が9月16日に広島地裁で...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    事件
    2026年09月21日 13:30

    沖縄県の新知事、古謝玄太氏の周辺がキナ臭くなっている。9月13日の沖縄県知事選では開票0%で当選確実が出たが、9月16日にX上で「浮島龍美」を名乗る人物が古謝氏の家族の通学先、関係先を特定、拡散。17日になってもネット上の愉快犯が浮島氏の投...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    社会
    2026年09月23日 15:45

    長年、親しまれた「Suicaのペンギン」の後釜は、どのキャラになるのか。JR東日本が進める「Suica」の新キャラクター選びが、思わぬ波紋を広げている。現行のペンギンは2001年のサービス開始から、カードや駅の案内でおなじみの存在。今回の交...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/15発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク