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記事全文を読む→歴代総理の胆力「福田康夫」(2)揺さぶられ続けた「背水の陣内閣」
しかし、政権という重責への執着も乏しかった福田は、何を成すためにトップリーダーのイスに座るのか。掲げた政策課題は、いささか貧弱なものであった。
福田は総理就任とともに掲げた自らの内閣を「背水の陣内閣」と、なんとも悲壮感に満ちたキャッチフレーズとし、安倍政権下で続出した「政治とカネ」の不祥事の一掃、「年金」の記録漏れ問題の解決を政権運営の“重要項目”としたにとどまった。
なるほど、政権に重みを欠き、初めから自民党内のガバナビリティ(統治)を持ち得なかったことから、常にハードルに足を取られ続けた。就任早々に防衛省の不祥事発覚、「後期高齢者医療制度」の開始や「ガソリン暫定税率」を巡る混乱の一方で、「年金」問題もその根の深さが次々と明らかになるといった具合だった。さらに、自民党内の消費税増税による財政再建派と「小泉構造改革」を支持する経済成長派がバトル、そうした中で福田は自らその方向性の指針を示すリーダーシップも見せなかった。
こうした福田政権の本質を見て取られたように、苦境脱出のため模索した解散・総選挙も、与党を組む公明党にゴネられて打てなかった。一方で、そうした政権の窮状を見て取った民主党の小沢一郎代表(当時)に自民党との「大連合」話を持ちかけられ、この話に安易に乗ろうとしたことで、ついには自民党内から政権維持のダメ出しを受けた。
元々、プライドだけは人一倍高かった福田は、結局、安倍と2代にわたる「政権放り出し」を余儀なくされたのである。
退陣表明の記者会見の席上、記者から「総理の会見はまるで他人事のように聞こえる」とやられた福田は、語気を荒げ言い放ったのだった。
「私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです!」
「客観的に見ることができる」とは、ナニを意味するのか、自民党内には、「“総理の器ではない”ことを自ら告白したということではないか」とする見方さえ出たのである。
政権取りに死力を尽くした者と、担がれてそのイスに座った者の差は、政権への「執着度」の違いであることを、福田は改めて示した格好であった。
■福田康夫の略歴
昭和11(1936)年7月16日、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、丸善石油入社。父・福田赳夫の秘書、首相秘書官を経て、平成2(1990)年2月、衆議院議員初当選。小泉内閣官房長官を経て、平成19(2007)年9月、内閣組織。総理就任時71歳。現在83歳。
総理大臣歴:第91代 2007年9月26日~2008年9月24日
小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。
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