社会
Posted on 2013年09月26日 09:58

東京五輪招致決定にも浮かない顔の福島県民

2013年09月26日 09:58

20130926g_2

 日本中が歓喜に沸いた東京五輪の招致決定。しかし、浮かない顔をしている人もいた。福島県民である。

 いわき市内に住む会社経営者の男性(48)が話す。

「自分が生まれて初めて日本で開催される夏季五輪だから、素直に喜んでいる部分はあります。景気だってよくなってほしいですよ。でも、プレゼンやら会見での招致委員会の人たちの話を聞いていると、福島に対して差別的というか、疎外感を感じてしまう。安倍さんじゃないけど、五輪の好影響から福島だけ『完全にブロック』されてしまうのでは、と不安になります」

 招致に対する最大の懸案材料が福島第一原発事故による放射能汚染だった。諸外国の不安を取り除くため、招致委員会は必死だった。9月4日の記者会見では竹田恒和理事長(65)は、

「東京は水、食物、空気についても非常に安全。福島とは250キロ離れている」

 と距離感をアピール。安倍晋三総理(58)も、9月7日の最終プレゼン後の会見で、汚染水問題についてこう述べている。

「福島第一原発の港湾内0.3平方キロ圏内に完全にブロックされている」

 東京は安全と主張すればするほど、福島はひどい惨状なのではとさえ思えてくるのだ。しかも、総理の発言には多分に“ウソ”も含まれている。

 ジャーナリストの横田一氏がこう指摘する。

「その後も東電はタンクから漏れ出た汚染水が港湾外に出ている可能性を『否定できない』としています。総理はモニタリング調査のデータからブロックされているとしていますが、シルトフェンスという樹脂のカーテンのようなものを敷いているだけです。これは港湾工事で汚泥の流出を防ぐために使用されるもので、汚染水をブロックするものではありません。少なくとも『完全に』というのはウソです。スポーツの祭典ですから、正々堂々とプレゼンしてほしかった」

 IOC委員はみごとにダマされたが、福島県民をダマすことはできなかった。

 福島県田村市、ここは東部の一部地区が福島第一原発の20キロ圏内に入っていた。その地区は「避難指示解除準備区域」に指定されたが、国が除染を6月までに終えたことから長期宿泊が許可された。田村市東部の都路地区に住む兼業農家の男性(56)はこう話す。

「ほとんどの世帯は避難したままですよ。小さい子供がいる家は帰ってくる気もない。学校も再開されるが、半分以上は戻ってきません。農地は荒れ放題で、セイタカアワダチソウが生い茂っています。そんな光景を毎日見ていたら、総理の言葉なんてそらぞらしいだけ。7年後の五輪なんて興味がないですよ」

 五輪までの7年間、福島県民は東京の熱気を感じることはできないのか。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/6/24発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク