社会

「集団的自衛権」行使容認で日本人傭兵が“戦地の真実”を警告(2)物ごいしていた住民が放火

 集団的自衛権の解禁は、政府がこだわり続けてきた「非戦闘地域」への派遣という考え方を一変し、戦闘地域に自衛隊を派遣することもまれではなくなる危険性をはらむ。必然的に、自衛隊員たちはこれまで以上の覚悟が強いられるだろう。

 紛争地に派遣された軍隊の基本的な心構えについて鈴木氏が語る。

「とにかく海外の紛争地は住民が貧しい場合が多く、彼らは生きていくのに必死。だから、生きていくために必要とあれば軍人相手でも何かを盗もうとする住民も少なくない。実際にうっかりしていると私たちも装備品を盗まれそうになったことがあります。それも、相手が子供や女性だったりするので決して油断はできないのです」

 だからといって、よけいな親切心もトラブルの元だという。湾岸戦争時、不発弾処理などで鈴木氏がイラク領内で活動した際、地域の治安が安定してくると、一時避難していた住民が戻ってきた。彼らは物ごいのために鈴木氏らの部隊に近づき、たまたま気のいい同僚が住民にコンバット・レーション(軍事用非常糧食)を配った。これを知った上官が住民に物をあげないよう、部隊内に通達したことが実は問題になったというのだ。

「物をあげなくなったことに『今までくれたのに何だ!』と住民が逆ギレして、野営地が放火されました」

 一見、上官に柔軟性がないように見えるが、鈴木氏は否定する。

「そもそも軍隊の任務は軍事活動。援助活動は国連や国際NGOなどが行うべきもの。うっかり住民に物をあげれば、次々に俺にもくれと集まってきて収拾がつかなくなる。そのうち、もらえた人ともらえなかった人の間で争いが起き、武器が氾濫している紛争地ではそれが住民同士の戦闘につながったり、最悪の場合、その銃口がこちらを向くこともあります」

 鈴木氏がアフリカのジブチ赴任中などは、移動中の車両に子供たちが訳もなく投石をしてくることもしばしばだった。もっとも軍用車両は頑丈なため、そのまま無視するか、上空への威嚇発砲などで対処可能だったという。また、ソマリアでは鈴木氏が所属するフランス外人部隊で発生するゴミを宿営地から離れた焼却場に捨てに行く際、ゴミを奪いに来る住民にも悩まされたことがある。

「私たちにとってゴミにすぎない空のペットボトルも、住民たちにとっては水筒に使える“お宝”。だからといってゴミを持っていくことは容認できません。それがもとで利権が発生し、住民抗争、引いては治安の悪化につながるからです」

 この時はトラックが減速しなければならないカーブなどで、住民の一部が荷台に飛び乗ってゴミを奪うということが頻発したため、そうした地点であらかじめ歩哨(監視に当たる兵士)が立って警戒し、時には威嚇発砲などで追い払った。可能性としては低いが、威嚇発砲でも間違えば住民に当たって命を奪ってしまう場合もある。しかし、戦地ではそれが日常なのだ。

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