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記事全文を読む→「たけし金言集」ネタ見せ時の殿の視点(1)
93年の元旦に放送された「第11回 ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」の中で、浅草キッドの水道橋博士さんが、殿と漫才を披露されたことがありました。この時、披露されたネタが、普段、浅草キッドがやられていたネタをベースとした漫才であり、殿は水道橋さんの相方、ボケ役の玉袋筋太郎さんになりきっての漫才だったのです。
当時、まだ弟子入り前の、一視聴者だったわたくしは、ワクワクしながらこの漫才を見ていたのですが、水道橋さんが殿に入れた、顔をはたくツッコミが恐ろしく強く、はたかれた殿の頭ははっきりとぐらつき、首がもげそうになっていました。
後に水道橋さんは「緊張しすぎて、つい“掌底”気味に入ってしまった」と語り、一方、殿は“参ったよ”といった感じで、
「水道橋が本番前、ムキになって俺にネタを説明してくるんだよ。あの時はきよしさんの気持ちがよくわかった」
と、漏らされていました。
この、緊張のあまり、殿に入れたツッコミについ力が入り“掌底”気味に入ってしまったといった、わりとショッキングな事件、実はわたくしにも覚えがあるのです。
あれは付き人になって間もない、97年のことです。当時、わたくしはコンビ歴1年程の「スピーク☆イージー」といった漫才コンビを同期のガンビーノ小林と組んでいて、ボケ担当の小林と2人して、交代で殿の付き人を務めていました。
その日、ある用事を殿から頼まれた、わたくしたち2人は、殿のアトリエ兼仕事部屋へ赴き、頼まれた用件を黙々とこなし、2時間程で終わらせると、殿から、
「ありがとな。お前たち、腹減ったろ? 何か食うか?」
とのお言葉をもらい、仕事部屋から程近い洋食屋さんから、大変値の張るステーキ丼を人数分注文するよう指示を受けたのです。
その恐ろしく値の張るステーキ丼が届く間、口の中をよだれでいっぱいにしながら、殿の横で所在なく静かにテレビを見ていると、
「お前たち、コンビ組んでどのくらいだ?」
と、おもむろに殿からの質問が発せられ、
「はい。1年になります」
と、答えると、
「普段、どんなネタやってんだ? 飯食ったらでいいからよ、後でちょっと漫才見せてくれよ」
と、いきなりの“贅沢であるが恐ろしい”殿だけに見ていただく、マンツーマンの“ネタ見せ”が急遽決定されてしまったのです。
突然の予期せぬネタ見せに、先程まで100%ステーキ丼で支配されていた頭の中は完全に真っ白となり、今まで使ったことのない毛穴から、冷や汗が吹き出るのをはっきりと感じたのでした。
とにかく、殿の前で漫才をするといった行為に対応すべく、殿に断りを入れてから、別室にて相方とステーキ丼が届くまでのわずかな時間を漫才の猛練習にあてること20分、思ったより早くステーキ丼が届いてしまい、もったいないことに、まったく味わう余裕などなく淡々とどんぶりをかき込んで夕食タイムが終わると、
「じゃー一服したら、お前らの漫才見るか」
と宣言され、一杯のお茶をゆっくりと飲み終えた殿から、
「そろそろやるか」
と、お声がかかり、わたくしたちは「では、お願いします」と一礼を入れ、「はいどうも~」で始まる漫才をスタートさせたのでした。
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