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「たけし金言集」ネタ見せ時の殿の視点(2)

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 この時、漫才をやりながらも、〈おや?〉と思ったことがありました。それは殿のネタの“聞き方”です。

 説明します。殿は、わたくしたちが一礼すると、すぐ、わたくしたちから見て、斜め左の位置に移動し、なるべくこちらの目線に入らない位置に席を移動させ、座り直したのです。次に、漫才がスタートすると、殿は終始下を向き、けしてこちらを見ようとせず、結局最後まで一度も、こちらを認めることがなかったのです。

 そう言えば、以前、これと同じようなことがありました。

 とある番組で、芸人さんたちが順番にネタを披露され、それをスタジオに入れた、お客さんと同じ観覧席で殿や司会者の方がネタを見るといったコーナーがあったのですが、殿は収録前、ディレクターを呼び、

「これはダメだよ。芸人さんが出てきて客席に俺たちが座ってたら、気が散ってやりづらくてしょうがないだろ」

 そう告げると、やはり演者の芸人さんの目線に入らない位置にモニターとイスを用意させ、本番はそこからネタを鑑賞されたのです。

 話をネタ見せに戻しましょう。漫才を静かに聴き終えた殿は、

「あれだな。ボケる時よ、もっとわかりやすくやったほうがいいんじゃねーか。言ってることはわかるけど、もっとボケましたって感じでよ‥‥」

 と、ネタの質やセンスでなく、客への見せ方をまずはアドバイスされたのです。そして、ゆっくり立ち上がると、ボケ担当の小林に、

「ちょっとどいてみ‥‥」

 と小声で告げ、わたくしの右側に立ち、

「お前、ネタ振ってみろよ」

 と、指示を出され、明らかにパニックになりながらもネタを振ると、殿は先程、わたくたちが披露したネタに沿った、たけし流のボケを炸裂されたのです。弟子入り2年目にしていきなりの殿との漫才。あれにはびっくらこいた!

 で、殿の一発目のボケが繰り出された瞬間、一瞬ツッコミが出遅れたわたくしは、〈ツッコまなくては!〉と焦った結果、余計な力が入り、殿の後頭部を“掌底”気味に思いっきりはたいてしまったのです。が、殿はそんなツッコミをもろともせず、漫才を続け、その後、2ネタ程ボケると、

「まーこんな感じか」

 と、“あくまで俺の意見だけどな”といった感じで、漫才を終わらせました。そして、席に戻った殿は、再度、お茶を飲みだすと、ややあってから、

「あと、お前、もう少し力抜いてツッコめよ。あれじゃ、いつか相方の首が取れちゃうぞ」

 と、実に的確なアドバイスをされたのでした。

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