芸能

ピンク・レディー 「モンスター神話」の真実(5)いつもコタツで力尽きていた

20140807j

 ピンク誕生から2年後、78年6月に同じビクターからデビューしたのがサザンオールスターズである。バンドの顔である桑田佳祐は、飯田のもとを訪れて不安そうに言った。

「このタイトルを一言、阿久先生に伝えてもらっていいですか?」

 そのデビュー曲は「勝手にシンドバッド」だった。沢田研二の「勝手にしやがれ」とピンクの「渚のシンドバッド」を掛け合わせたもので、いずれも阿久の手による詞だ。

 飯田から伝えられた阿久は、膝を打って即答した。

「それはおもしろい、そういうユーモアが一番いい」

 それは、自分たちのピンク・レディーという作品展開にも共通することだった。いかに世間を驚かせ、いい意味でファンを裏切っていくかの勝負でもあったと飯田は言う。

「僕も阿久先生も曲のタイトルは大事だと思って、それぞれ20や30はポケットに忍ばせていましたね。それを先生と突き合わせながら『これがいい』『いや、ユーザーを裏切るにはこれでいこうよ』というように議論していた」

 とりわけ飯田が大事にしたタイトルが7枚目のシングル「サウスポー」である。78年3月に発売され、ピンクの全シングルで2位となる146万枚のセールスを記録。

 ただし、レコーディングの前夜に異変が起こった。

「詞も曲も今ひとつピンと来ない。ピンクの新曲といえばプレス工場を空けて待機しているんですが、それでも、このままでは出したくないと思ったんです」

 都倉の曲はゆったりとしたミディアムテンポ調。幸い、ストックの中に飯田のイメージに合うアップテンポの曲があったので入れ替えた。そして阿久には、その曲に合わせて全面的に書き直してもらった。

「それは阿久先生もムッとしたと思います。ただ、常識を覆すものを作りたいという信念がありましたから、そこは引けませんでした」

 阿久が一晩で書き直した詞は〈背番号1のすごい奴が相手〉と始まる、まさしくアイドル歌謡の常識を打ち砕く世界観だった。阿久は後に、もしあのまま平板な詞で「サウスポー」を発売していたら、ピンクのブームは急速に終焉していたのではないかと述懐している。

 そんな大ブームの渦中に、同じ「T&Cミュージック」から“ピンクの妹分”としてデビューしたのが天馬ルミ子だ。中1でデビューした天馬は、学年で7つ上の2人を憧れの目で眺めていた。また、相馬マネジャーの母親が住んでいた渋谷区富ヶ谷の一戸建てを寮代わりに、同じ屋根の下で暮らしたこともある。

「ただ、ピンクの2人がベッドに横になったのを見たことがありませんでした。いつも明け方に帰ってきて、居間にあったコタツに入って、ガウンだけ羽織って仮眠を取る。そんな毎日でしたね」

 天馬は、さらに過酷な日々にも同行することとなった。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「致死量」井上清華アナの猛烈労働を止めない「局次長」西山喜久恵に怒りの声
2
完熟フレッシュ・池田レイラが日大芸術学部を1年で退学したのは…
3
またまたファンが「引き渡し拒否」大谷翔平の日本人最多本塁打「記念球」の取り扱い方法
4
打てないドロ沼!西武ライオンズ「外国人が役立たず」「低打率の源田壮亮が中心」「若手伸びず」の三重苦
5
京都「会館」飲食店でついに値上げが始まったのは「他県から来る日本人のせい」