社会
Posted on 2023年05月14日 09:58

灘と開成の秀才が「東大医学部受験を回避し始めた」のは医師が人工知能にとって代わられるから

2023年05月14日 09:58

 これぞ、春の椿事──。

 今年の大学入試、東大合格者ランキングが出揃った。岸田文雄総理の母校たる開成高校や、高校生クイズの常連でおなじみ灘高、麻布高校など、東西有名進学校が上位を占めるものだが、この数年、開成高校で異変が起きている。

「実は『東大理III離れ』が起きているんです。東大入試の中でも群を抜いて最難関と言われるのが、4年制大学の教養課程にあたる『理科3類』、いわゆる理IIIです。大学3年生から医師を養成する医学部医学科の定員は110人。そのうち100人の募集枠が理IIIに割り当てられているので、世間一般に理III=東大医学部と解釈されています。今年、開成高校から理IIIに合格者したのは、わずか3人。2020年までは15人から10人の合格者を出していたのに、2022年に6人、今年はその半分にまで激減しました」

 こう話すのは、開成OBの外科医だ。開成の代わりに桜蔭高校が理III合格者数1位になったが、単に女子学生や新興進学校が台頭しているわけではないという。

「開成の東大合格者数自体は、むしろ伸びているんです。前年比30人増の148人で、特にIT系の学科に進む理科1類の合格者が増えました。なぜかといえば、今どきの神童は『自分が50歳になった頃に、医師という仕事はなくなっている』と考えているからです」(教育産業関係者)

 いったい、どういうことか。学生たちは次のように、ハッキリ言うのだという。

「わざわざ難易度の高い医学部、法学部を目指したところで、医師や弁護士、裁判官にはリスクがつきまとう上に、少子高齢化で人口減少が進む中で、パイの奪い合いをするだけ。何の展望もない。果ては人工知能に仕事を奪われる。だから人工知能の分野に進みたい」

 これは先の外科医が、愛息を開成に通わせている同窓生から聞いた話だという。

 天才肌が多い灘高校でも、理IIIは敬遠される傾向にある。30年後の日本は氷河期世代=団塊ジュニア世代が80歳を超え、人口は激減しているのだから「職を奪われる側」ではなく「職を奪う側」に立つという発想は、秀才ならでは。受験生の人間性や適性を無視し、勉強ができるからというだけで「医学部至上主義」だった今までが異常だったと言えるだろう。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/8/5発売
    ■680円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク