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記事全文を読む→二宮清純の「“平成・令和”スポーツ名勝負」〈豪州の「勝ち点3」を阻止せよ〉
「日本 VS 豪州」サッカー北中米W杯アジア最終予選・2024年10月15日
「うれしさが爆発するというよりホッとしている。自分が(代表)監督の時に、W杯出場を途切れさせなくてよかった」
さる3月20日、サッカー日本代表は埼玉スタジアムでバーレーン代表に2対0で勝利し、8大会連続8度目の本大会出場を決めた。
冒頭のコメントは森保一監督の本音だろう。
W杯出場を決めた時点で7戦6勝1分け、勝ち点19。得失点差は実に22(C組)。傍からは「無双」のように見えるが、ちょっとした油断が死を招くのがW杯予選。森保は現役時代に〝ドーハの悲劇〞を経験している。
過日、本人に話を聞くと「代表監督として先の仕事は入れない」と語っていた。
「いつ元監督になるかわかりませんから‥‥」
北中米W杯出場を決める前のアジア最終予選で勝ち点1(引き分け)に終わったのは24年10月15日、埼スタでの豪州戦だけ。ホームということもあり、1対1の引き分け直後のスタジアムはため息に包まれたが、どんな強いチームでも、予選道中、おいおい、と言いたくなるような試合がひとつや2つは必ずある。
オウンゴールで先制されながらも、慌てず騒がず引き分けに持ち込んだのだから、多とすべきだろう。
このゲームを、日本は3連勝の勝ち点9、グループの首位で迎えた。一方の豪州は勝ち点4の2位。豪州からすればアウェーということもあり、〝専守防衛〞型の布陣(5-4-1)で臨んだ。
試合の3週間前、豪州はグラハム・アーノルドからトニー・ポポヴィッチに指揮官が交代した。ともにサンフレッチェ時代の森保のチームメイト。ポポヴィッチは2014年のAFCチャンピオンズリーグで、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズの監督として、森保率いるサンフレッチェを決勝トーナメント1回戦で退けている。
ポポヴィッチは現実主義者だ。ここまでの日本の戦いぶりを見て、日本のホームで勝ち目はない、と判断したのだろう。ワントップを残し、ゴールキーパーを含めた10人で守り切る、という選択をした。
運も豪州に味方した。後半13分には日本のDF谷口彰悟が痛恨のクリアミスで自陣のネットを揺らしてしまった。
だが31分、今度は豪州のキャメロン・バージェスがオウンゴール。これで試合は振り出しに戻った。
同点の時点で、日本は交代枠を、まだ2つ残していた。しかし、切ったのは38分の1枚(上田綺世→小川航基)。ベンチには前田大然、旗手怜央といった攻撃のカードが残っていた。
これについて問われた森保は、こう答えた。
「交代枠をまだ1枚残していたが、相手を押し込めていた。同じかたちで前に圧力をかける方が逆転するためにはベストだと思った」
おそらく指揮官の頭には、2つの選択肢があったはずだ。ここは一気呵成に勝ち点3を狙うべきか、それとも相手の勝ち点3を阻止すべきか。万が一、豪州が勝ち点3を獲得すれば、試合が終わった時点での日本との勝ち点差は、わずか2になってしまう。これは絶対に避けたいと判断したのだろう。
「(勝ち点3を獲れなかったことより)相手に勝ち点3を与えなかったことの方が大きい」
世界最高峰のプレミアリーグでプレーする三笘薫の言葉が、チームの成熟を物語っていた。
二宮清純(にのみや・せいじゅん)1960年、愛媛県生まれ。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。最新刊に「森保一の決める技法」。
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