今年のGⅢ・府中牝馬ステークス(6月22日、東京・芝1800メートル)は、人気が拮抗するハンデ重賞らしい、大波乱必至の様相を呈している。
しかし、である。出走メンバーの戦績を馬柱で注意深く深掘りしていくと、意外な堅軸馬として「能力的には一枚も二枚も抜けているにもかかわらず、重賞未勝利ゆえにハンデに恵まれた激アツ伏兵馬」が鮮やかに浮上してくるのだ。
その激アツ伏兵馬とはズバリ、前々走の斑鳩S(京都・芝1600メートル)で自己条件の3勝クラスを勝ち上がり、前走のGⅡ・阪神牝馬S(阪神・芝1600メートル)7着から参戦してきた、団野大成騎乗のタガノエルピーダ(牝4)である。
タガノエルピーダは昨秋のGⅠ・秋華賞(京都・芝2000メートル)で、優勝馬からわずか0.6秒差の7着と好走した、能力抜群の素質馬。本サイトが昨年10月16日に公開した記事でも指摘したように、この時、超ハイペースの激流を横綱相撲の先行策とマクリに打って出て、最も強い競馬を見せつけたのが同馬だったのだ。
今回は陣営が「名を捨てて実を取る決意」で臨むGⅢ重賞。54キロのハンデに恵まれた感があり、まさに狙いすました一戦と言っていい。
このタガノエルピーダとともに大波乱を呼び起こしそうなダークホースも、多士済々だ。
中でも筆者が注目しているのは、2勝クラスや3勝クラス、あるいはリステッドなどを勝ち上がってエントリーしてきた格下馬である。格下馬に与えられる軽ハンデの恩恵は絶大であり、アッと驚く穴馬券の一翼を担うケースは少なくない。
とはいえ本来、ハンデ戦は「横一線でゴールイン」を原則としてプランニングされたレースである。それゆえ、力づくで対抗馬を絞り込むことは必ずしも得策とは言えず、やはりタガノエルピーダから手広く流す一手が上策となるだろう。
いずれにせよ今年の府中牝馬Sが、「人気の盲点」となっているタガノエルピーダを軸にした「波乱の激戦」となることは間違いなかろう。
(日高次郎/競馬アナリスト)