社会
Posted on 2025年09月21日 10:02

ホントーク〈今道琢也×名越健郎〉(3)生き残る策は新事業への投資

2025年09月21日 10:02

名越 本に書かれていましたけど、将来、AIでテレビ番組が制作される可能性はありますか。

今道 「動画生成AI」はどんどん進歩しています。最近、AIが作った映像をよく目にしますが、実写映像と見分けがつきません。近い将来、台本や映像や効果音がAIによって作られた番組が登場しても不思議はないと思います。

名越 個人でもAIを使えば、実写並みの映像が作れますね。

今道 はい。これまでのテレビ業界は、歌番組やニュース番組などの映像ソフトを作って、それを視聴者に流すというのがビジネスモデルでした。しかしその映像ソフトをAIで合成できれば、映像業界がインフレ状態になり、テレビ番組は大量の動画の中に埋もれてしまいます。

名越 大学生の就職先として、テレビ局の人気が低下していることをこの本で知りました。

今道 うすうすは感じていたのですが、調べたところ人気就職先ランキングの100位内に1社も入っていませんでした。私の就職活動当時には、多くの学生がテレビ局にエントリーシートを送っていたのに、驚きです。

名越 衝撃的なデータですね。そこまで人気が下がった要因は何でしょうか。

今道 テレビ業界が「ブラックな職場」と認識されたうえに、産業として将来性がない点が敬遠されたのではないでしょうか。名越 いい人材がなかなか入ってこないとなれば、復活を狙いたいテレビ局としては苦しいですね。

今道 本当に厳しいです。テレビが古くから優位性を持っていたドラマやスポーツ中継の分野にもネットフリックスやアマゾンが本格参入しています。

名越 ネットフリックスが来年3月に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本国内での独占放送権を獲得したことが話題になったばかりです。

今道 完全に時代の流れです。テレビにはあと何が残されているのか、というのが正直な気持ちです。

名越 これからテレビ業界は、どうすれば生き残っていけますか。

今道 このままでは、どう頑張っても衰退は避けられません。経営を多角化していくことが必要でしょう。すでに日本テレビはフィットネスクラブの「ティップネス」、TBSは学習塾「やる気スイッチグループ」を子会社化しています。

名越 テレビ局は赤字でも、グループ全体で黒字経営にすればいいということでしょうか。

今道 新聞社やテレビ局は、古くからテナント貸しなどの不動産事業を手掛けていますけど、今後は消費者や視聴者の生活に広く関わる新事業へ積極的に投資していくべきでしょう。本業とは全く関係ない老人介護施設や物流事業などへの投資もありうる話です。

名越 新聞や通信社業界の経営はテレビよりもっと厳しいわけで、いよいよメディア業界は新事業に活路を見出さないといけない時代ですね。本日はとても勉強になりました。

ゲスト:今道琢也(いまみち・たくや)1975年大分県生まれ。99年、京都大学文学部(国語学国文専修)卒、NHK入局。15年間アナウンサーとして勤務ののち14年に独立し、インターネット上の文章指導専門塾「ウェブ小論文塾」を開講する。「文章が苦手でも『受かる小論文』の書き方を教えてください。」「人生で大損しない文章術」など著書多数。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)など。

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