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記事全文を読む→ホントーク〈山下一仁×名越健郎〉(2)農協の関連団体が貴重な天下り先
名越 山下さんと僕は岡山県笠岡市出身の同郷です。我々が子供の頃の岡山の農村はまだまだ貧しかった。僕は減反政策や、米の価格をつり上げるのは、政府や農協がそんな農家の収入増のためだと理解していました。でも本書によると、そうではないわけですね。
山下 多くの国民のそうした誤解に乗じて、農家・農協の既得権益を守っていると言ってもいいでしょう。
名越 以前、秋田の国際教養大で教えていた時、大おお潟がた村を訪れました。ここは20ヘクタール以上の農家もいる大規模農業で、一家族の年間平均所得は2000万円近い。秋田では珍しく、人口も増えていると聞きました。
山下 農家が所得を増やすには規模を拡大すべきです。そのためには、小規模農家から農地を集めて集約すればいいのですが、それを言うと必ず「小規模農家を見捨てるのか」と批判が殺到します。でも、小規模農家はサラリーマンなどの兼業農家が多いので、生活に困ることはありません。また年間30日も米作をしていません。
名越 笠岡に近い福山市に65年頃、今のJFEスチール西日本製鉄所が工場を作って兼業農家が増えました。全国的にそうなりましたが、今も国が助成金を出して減反を続けて、米の価格を維持するのは不思議ですね。
山下 一戸あたりの規模を拡大すれば、逆に農家の数は減ります。そうなると農業票に支えられてきた農水族議員は選挙で不利なので当然、反対する。農水省は農協という天下り先を守りたいのです。
名越 昔は農水省から農協に天下りする人はいませんでした。
山下 民主党政権時代(09年)、天下り先だった公益法人の予算が大幅に削減されたため、今では農協の関連団体や企業が貴重な天下り先なんです。
名越 農協の思惑はどこにあるのでしょう?
山下 農協が価格を高く保ったことで、大量の零細な兼業農家が生き残りました。彼らはサラリーマン所得をJAバンクに預けてくれます。この総額が今や109兆円。JAは日本屈指の金融機関になり、投資や運用で出た儲けを、傘下の農協に毎年3000億円キックバックする。つまり、農水族議員、農水省、農協の「農政トライアングル」が権益を守るために減反・高米価政策で小規模兼業農家を生かしているわけです。
ゲスト:山下一仁(やました・かずひと)1955年岡山県生まれ。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所上席研究員(特任)。77年、東京大学法学部卒業後、農林省入省。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、同局次長などを歴任。08年農林水産省退職。
聞き手:名越健郎(なごし・けんろう 拓殖大学客員教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。
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