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記事全文を読む→「世代論」で読むプロ野球〈大谷・誠也世代〉(1)世代最強は藤浪晋太郎だった
8月5日、夏の甲子園の開幕だ。日米球界に輝く大谷翔平、鈴木誠也も、この大舞台を目指した。94年度生まれの彼ら世代は、現在でこそ「大谷・誠也世代」と称される。だが当時の高校最強といえば、藤浪晋太郎だった。完成形と未完の大器たち─未来は大きく分かれることになる。
いまとなっては、1994年度生まれを「大谷・誠也世代」と呼ぶことに異論は少ないだろう。投げて打って、既存の野球用語では説明しきれない記録をつくる大谷翔平。日本の4番から海を渡り、メジャーの中軸を担う鈴木誠也。ふたりを並べれば、「世界基準の新人類」という看板も大げさには聞こえない。
だが、2012年に時を戻すと景色はまるで違う。その世代の中心にいたのは、大谷でも鈴木でもない。大阪桐蔭の藤浪晋太郎だった。高校野球の世界で「誰が一番強いのか」という問いに、最も明快な答えを出していたのが藤浪である。未来の可能性ではなく、目の前の勝敗で証明した。しかも、春と夏の甲子園を続けて制するという、これ以上ない形で。
もっとも、藤浪の「完成」は突然できあがったものではない。高2の11年夏、大阪大会では決勝まで27イニングを投げて失点はわずか1。ところが東大阪大柏原との決勝で7回に3点を失い、チームは6対7のサヨナラ負けを喫した。
あと一勝で甲子園という場所から転げ落ちた経験が、翌年の藤浪をつくった。春夏連覇の前には、全国の観客が知らない大阪での敗北があったのである。大舞台で崩れない投手になったのは、最初から崩れなかったからではなく、一度、最も痛い場面で崩れたからだった。
象徴的なのが、12年センバツ1回戦の大阪桐蔭対花巻東だ。身長197センチの藤浪と、193センチの大谷。プロのスカウトが熱視線を送る大型右腕同士が、いきなり甲子園でぶつかった。大谷は2回、藤浪のスライダーを右翼席へ運び、打者として強烈な置き土産を残した。
しかし、試合は大阪桐蔭が9対2で快勝。大谷は11三振を奪う一方で11四死球と荒れ、藤浪が完投して投げ合いを制した。後世から見れば大谷の本塁打は「伝説の予告編」だが、その日の主役は疑いなく藤浪だった。
ここに、この世代を語る面白さがある。後に最も遠くへ行く選手と、18歳時点で最も完成されていた選手が、同じグラウンドに立っていた。大谷は可能性の塊だった。藤浪は勝利の完成形だった。どちらが上かではない。
あの春の甲子園は、同じ世代に二種類の怪物がいたことを、まだ誰も十分に理解しないまま映し出していたのである。
ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。
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