スポーツ

競馬界の巨大王国「ノーザンファーム」の独走と野望(4)「神技」に負けた日本人騎手

20150521k

 社台グループ、そしてノーザンファームなしには成り立たない、とさえ言える競馬界の現状。その発言力は有力騎手、厩舎、海外馬主、そしてJRAにまで及ぶ。巨大組織は「帝王学」を継承することでさらなる進化を図り、「世界制覇」に向けて動きだそうとしている──。

 競馬界で圧倒的な存在感と影響力を発揮している巨大組織「社台グループ」。その中核である生産牧場「ノーザンファーム」がいかにして台頭し、独走状態に至ったかをは前回までで書いた。素質馬を優れた施設と環境で鍛え上げていることが何より大きいのだが、もう一つのファクターとしてあげられるのが、「優秀な騎手の確保」に他ならない。

 一流馬には必ずと言っていいほど腕の立つリーディング上位の騎手を乗せているから、ノーザンファームは年間100億円を超える収得賞金を獲得できたのだ。逆に言えば、ノーザンファームの期待馬に乗れることが、今では一流騎手の証し。その一流騎手の中でも一段高く見られているのが外国の名手たちである。それはクリストフ・スミヨンが、エピファネイアに騎乗して14年のジャパンカップ(GI)を圧勝した時の吉田勝己氏(ノーザンファーム代表)のセリフでも明らか。

「仕上がり、乗り役、レース運びと完璧でした。古馬では断トツの強さ。今年3戦負けていたのが不思議でならなかった」

 ジャパンカップに至るまで、この年の同馬は産経大阪杯(GII)を3着、クイーンエリザベスカップ(香港・GI)4着、天皇賞・秋(GI)は6着と振るわなかった。これは遠回しに主戦だった福永祐一を批判したものと取れる。日本ではリーディングを争う騎手でも海外の一流騎手に比べれば劣る、というわけだ。

 勝己氏の外国人騎手へのこだわりは、競馬誌「ギャロップ」(13年10月27日号)の座談会でもハッキリうかがえる。

 その中で前田幸治氏(ノースヒルズ代表)が社台の外国人騎手重用に異議を唱えたのに対し、「日本人騎手にもっと上手くなってもらわないと(乗せられない)」「外国人騎手が入ってくることで日本人騎手の腕も上がる」と反論。ポリシーを明確に表してみせた。この発言は、外国人騎手の日本国内や海外遠征での実績に裏付けられたものだから、リアリティがある。

 例えば14年のドバイ・シーマクラシック。ジェンティルドンナに騎乗したライアン・ムーアは、直線で前が狭くなるやいなや馬を瞬時に右に向けて追い出し、差し切って見せた。まさに神技だった。

 JRAが今年3月、ミルコ・デムーロとクリストフ・ルメールにJRA騎手免許を発行したのも、日本競馬界全体の技術向上につながると認めたからだ。と同時に、彼らの高い技量によって「競馬ファンが安心して馬券を買えること=売上面を考慮した」ことも間違いあるまい。ベテランの競馬ライターが言う。

「社台が推し進めてきた外国人騎手重用、ひいては通年騎乗の導入には騎手クラブの一部から反対の声がありましたが、多くの騎手は時代の流れに沿うものと理解していました。サッカーや野球では外国人選手流入が当たり前なのに、競馬だけ認めないわけにはいかないだろう、と。人望の厚い橋口弘次郎調教師が歓迎のコメントを発してからは、みんな当たり前のように捉えています」

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
都はるみ「引退⇒復帰⇒活動停止」そして矢崎滋と東北ビジネスホテル暮らし/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史
2
岩城滉一「舘ひろしと昔はほぼ毎日一緒にいた」/テリー伊藤対談(3)
3
挫折の末に大谷翔平の妻になった「バスケ元日本代表」真美子夫人のアスリート人生
4
前園真聖マヌケ大失態!RX-7を買って運転免許合宿に行ったらひとり取り残された
5
見た者すべてを不幸に!「世界一呪われた絵」に潜む「奴隷82人の残虐拷問死体」