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記事全文を読む→夏の甲子園・我が心の決勝戦(3)ダルビッシュを完全解剖した戦慄の木内マジック!
03年夏の選手権決勝は、大会前から優勝候補に挙げられていた2チームの頂上決戦となった。
その大会限りでの勇退を表明していた、名将・木内幸男監督率いる常総学院(茨城)と、2年生ながらチームの絶対的エースとして君臨するダルビッシュ有(現・レンジャーズ)の東北(宮城)との一戦。試合の焦点は大会NO1右腕のダルビッシュを老獪な木内采配がどう攻略するか。この一点に絞られていた。何せダルビッシュは最速149キロを誇るうえに、多彩な変化球を操る“怪物右腕”。並大抵の方法ではなかなか攻略は難しい。だが、木内監督の発想は違った。試合前、選手たちにこんな話をしたのだ。
「ダルビッシュは将来、日本一の投手になる。そんな投手と対戦出来るなんて、こんな幸せなことはないよ。で、幸せついでにお前らには打てる投手じゃないけど、打てば将来、子供に『お父さんはあんなすごい投手から打ったんだよ』って自慢の勲章になるから」
まさにマインドコントロール。強攻策宣言だ。
実は木内には勝算があった。ダルビッシュの体調が万全ではなかったのだ。準々決勝で右足のすねを痛め、試合後はお立ち台に立つことができず、座って取材を受けていたほど。前日の準決勝では登板自体を回避していた。だが、決戦前夜にみずから先発マウンドを直訴。それを伝え聞いた木内が目をつけたのだ。木内の思惑はこうだった。「ケガをしているし、まだ2年生だから『これが最後の夏だ』という覚悟を持った力投はしてこない。逆に変化球でかわしてくる」。悪く言うと、ダルビッシュは“ちょっと抜く”時がある。その球を長打する──それが狙いだったのだ。
試合序盤は様子見で打線にダルビッシュの投球を観察させた。結果、ストレートは打てない。木内の脳内で変化球待ちが決まった瞬間だった。その成果は2点リードされた4回表にやってくる。
先頭打者が内野安打で出塁すると、誰もが送りバントだと思うなか、続けざまの強攻策。次打者はショートフライに倒れたものの、3番坂克彦(現・阪神)が二塁打を打って1死二、三塁とチャンスが拡大。ここでサードゴロの間に1点を返すと、二塁打と三塁打が続けざまに飛び出し、あっという間に逆転に成功したのである。
8回表にも1点を追加した常総はそのまま4-2で逃げ切り、木内監督は勇退の花道を自身3度目、怪物ダルビッシュを完全攻略しての全国制覇で飾ったのだ。
一方、手負いのダルビッシュは124球の熱投も彼自身最多の被安打12。のちのメジャーリーガーを持ってしても、東北勢の初優勝にはついに届かなかったのだ。
(高校野球評論家・上杉純也)
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