芸能

「消えた主役」名作ドラマ・映画の知られざる“交代劇”(1)「鬼龍院花子の生涯」脚本家・高田宏治インタビュー

20160915l

「なめたらいかんぜよ!」は、流行語にもなった夏目雅子の名セリフ。脚本家・高田宏冶氏にとっても渾身の一筆だったが、その誕生には、思いもよらない「交代劇」が待ち受けていた。

──半世紀以上、シナリオを描き続けている高田氏にとっても「鬼龍院花子の生涯」(82年、東映)は特別な作品だったと思います。

高田 最初は大竹しのぶに鬼政(仲代達矢)の養女・松恵役をオファーしていた。ところが大竹は、東映の京都撮影所を怖がっていたし、当時の五社英雄監督の評判が悪かったこともあって、一向にOKを出さない。それで夏目雅子に話がいったということ。

──脚本家としては、その交代はどうでした?

高田 実は僕もピンチヒッターなんや。最初はベテランの野上龍雄さんに五社さんが頼んでいたけど、宮尾登美子の原作を読んで「気乗りがしない」と。僕は逆に土佐弁の魅力もあり、おもしろいなと思ったよ。

──当時は清純派だった夏目雅子が、養父に抱かれる場面もある役を快諾したんでしょうか?

高田 それどころか五社さんのところに行って、台本を尻に敷いて「絶対、私にやらせてくれないとここを動きません!」と迫ったそうや。まあ、五社さんの言うてることやけど(笑)。

──決めセリフの「なめたらいかんぜよ!」が大変な評判になり、夏目雅子の評価も急上昇しました。

高田 最後に鬼政に向かって「お父ちゃん、好きや」と言うシーンは、スタッフやカメラマンが泣いて撮影にならなかったくらい。その美しさは大竹しのぶじゃ成立してなかったやろな。五社さんは「大竹がなんぼのものじゃい!」の一念で撮ったらしいし。

──代役が功を奏したケースですね。さて、実録ヤクザ映画でも高田脚本の名作は多いですが、いわくつきなのは「北陸代理戦争」(77年、東映)でしょうか。

高田 松方弘樹が演じた主役のモデルが、公開直後に劇中と同じ喫茶店で射殺されてなあ。そもそも、これは「新仁義なき戦い」の4作目として予定されたけど、菅原文太が「もう『仁義』はいいよ」と。それで松方に代わった。

──さらにクランクイン直後、渡瀬恒彦がジープ転倒で生死のふちをさまよう大事故もありました。

高田 それで伊吹吾郎に交代。不思議な運命の映画やったね。

──再び宮尾登美子原作に戻りますが、女の戦いを打ち出した映画が多いゆえに、キャスティングの難航は多そうですね。

高田 池上季実子が評判になった「陽暉楼」(83年、映)も、僕と日下部五朗プロデューサーは秋吉久美子に交渉していた。ところが、いろいろ注文をつけるので、こっちがシビレを切らして「やめようや」と。それから「藏」(95年、東映)も、烈という少女の役が宮沢りえから一色紗英に代わった。

──すでにキャストの発表もあっただけに、宮沢りえの降板は騒動になりました。

高田 本来は2番手だった義理の母役の浅野ゆう子が、トップじゃないとイヤだと言い出した。そうなると宮沢サイドが「話が違う」と怒るのはしゃあないな。

──会見で浅野は「順列はあいうえお順かと思った」ととぼけていましたが、女優ならではのしたたかな物言いですね。

高田 残念だったのは米倉涼子が「茶々 天涯の貴妃」(07年、東映)の主演を降りて、宝塚出身の和央ようかに代わったこと。米倉はドラマの役柄同様、より悪女を演じたかったようで、そこが一致しなかった。

──降りるほうも、代わりに演じるほうも、役者とはプライドの火花を散らすことがよくわかります。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    動画もオンラインゲームもラグ知らず! OCN 光はなぜ夜のエンタメシーンでもおすすめなのか

    Sponsored
    251202

    PCの画面を見ながら、F氏は愕然とした。デビュー以来推していた某女性グループの1人が卒業するから….ではない。涙を堪えながら、その最後のお別れとなる卒業ライブ配信を視聴していたところ、最後の挨拶を前に、動画サイトの画面がカクつき…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , , |

    中年リスナーがこぞって閲覧!“あざとかわいい”人気美女ライバーが、リスナーとの関係や仲良くなれるコツを指南

    Sponsored
    264969

    ここ数年来、ネット上の新たなエンタメとして注目されている「ライブ配信」だが、昨今は「ふわっち」の人気が爆上がり中だ。その人気の秘密は、事務所に所属しているアイドルでもなく、キャバ嬢のような“プロ”でもなく、一般の美女配信者と気軽に会話できて…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    配信者との恋愛はアリ? 既婚者が楽しむのはナシ? 美女ライバーと覆面リスナーが語る「ふわっち」セキララトーク

    Sponsored
    266588

    ヒマな時間に誰もが楽しめるエンタメとして知られるライブ配信アプリ。中でも「可愛い素人ライバー」と裏表のない会話ができ、30代~40代の支持を集めているのが「ふわっち」だ。今回「アサ芸プラス」では、配信者とリスナーがどのようにコミュニケーショ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

注目キーワード

人気記事

1
阿部慎之助は「戦犯扱い筆頭」元木大介は原監督と「亀裂」ダメ巨人で始まるコーチ陣大粛清
2
ロンブー淳がアンチに「直接話そう」公開した携帯電話番号にかけたら「生配信」されるかも
3
今年のプロ野球ドラフトは「大学生投手の大豊作」で花巻東・佐々木麟太郎を敬遠する球団が出た
4
「桑田派」巨人・大勢をにわか仕立てで潰す気か!「桑田真澄を1軍投手コーチに戻せ」という投手陣の叫び
5
水卜麻美・井上清華・渡邊渚「体調不良」で女子アナが続々ダウンする「昼夜逆転」生活の限界