スポーツ

「ミスター・長嶋茂雄」を育んだ佐倉ものがたり(5)母・父から継いだ運動神経

20161208k1st

 幼少時代、青春時代の日々が、その後の茂雄の人生を決定付けたのだろう。スーパースターの階段を駆け上る前夜、この街で家族と過ごした思い出を追った。

 今回、「佐倉ものがたり」の取材で、旧知の親類縁者、関係者に会うと、意外な事実が次々に判明した。

 まずは、父方の従弟、長嶋義倫(よしみち)の話である。

「長嶋家は18代前まで遡ることができます。400年以上前、(市原市)五井のほうから流れてきた一族らしい。向こうでゴルフをしたとき、前と後の組が長嶋姓で、驚いたことがあります。うちは代々豆腐屋を営んでいました」

 菩提寺の長源寺にある先祖代々の墓には、享保年間の墓石もあり、江戸時代の早い時期に根付いた一族のようだ。

 母方の従弟、根本正一郎は13代目になる。

「根本家は江戸時代、徳川家に大きな陣幕を納め、金を数貫目いただいたという話が伝わっています。うちの屋号は染物屋を営んでいた関係で『紺屋』といいます。はるか先祖は三重県の津の藩士で、戦国時代にこちらへ流れてきたと聞いています」

 長嶋家は小柄な人が多いが、根本家は違う。

「茂雄ちゃんの母・ちよさんのお父さん、七郎じいさは運動神経抜群で、80歳になっても脚立に上って植木の手入れをしたほどの偉丈夫でした」

 いまをときめく大谷翔平(日本ハム)の両親、徹・加代子夫妻にロングインタビューしたときのことだ。翔平の運動神経と肉体は誰から濃密に受け継いだのかという話に発展し、中学時代にエースで四番、そして走り幅跳びの記録をつくった加代子の父ではないかという結論に至った。

 競馬新聞の馬柱には父・父(父方の祖父)は載っていないが、母・父は必ず出ている。王貞治の母・父は、輪島塗に金箔をほどこす腕の良い左利きの職人であった。ONから大谷まで、野球選手の遺伝子は、母・父から濃密に受け継ぐというのが、わたしの持論である。

 かつて根本正一郎の父・武雄(故人)から、長嶋利と根本ちよの結婚式について聞いたことがある。

「姉のちよは5人姉弟の長女で、末っ子のわたしとは年の差が17もあります。姉が24歳のときですから、1926年だったと思います。親戚の人が見合い話を持ってきましてね。豆腐屋の利さんのところへお嫁に行くかといわれてお見合いをしたんです。話はトントン拍子に進み、結婚式の日は羽織袴を着た利さんが人力車を伴って迎えに来ました。当時の結婚式はお祭りみたいなもんですからね。迎えに来た利さんを家に招き入れ、新郎新婦を囲み、飲めや歌えの大騒ぎ。それから利さんが姉を人力車に乗せ、利さんの家へ行き、型通りの三三九度をすませると、また飲めや歌えの宴会が朝までつづきました‥‥」

松下茂典(ノンフィクションライター)

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
楽天・田中将大に「不可解な動き」次回登板のメドなしで「無期限2軍」の不穏
2
水原一平が訴追されて大谷翔平の「次なる問題」は真美子夫人の「語学力アップ」
3
「すごく迷惑ですね」沖縄せんべろ居酒屋店員が嘆く「招かれざる客」のやりたい放題【2024年3月BEST】
4
【ボクシング】井上尚弥「3階級4団体統一は可能なのか」に畑山隆則の見解は「ヤバイんじゃないか」【2024年3月BEST】
5
訪米の岸田首相を招いた晩餐会で「なぜか黒ネクタイ姿」バイデン大統領の「笑えない話」